【芝居】「鵺的第一短編集」鵺的
2015.12.20 19:30 [CoRich]
23日まで新宿眼科画廊。90分。
結婚した妹によく似ている女を恋人にした男。しかし女は男が妹を女として愛していることを知っている。「ふいにいなくなってしまった白い猫のために」
一人の女をめぐって二人の女が取り合っている。取り合いになっている女は自由でいたかった。「くろい空、あかい夜、みどりいろの街」
恋人として暮らしている男二人。片方は女でも男でもチャンスがあれば他人と寝ていて、通りすがりの女が恋人気取りで家までおしかけてくる。「ステディ」
同性愛などのセクシャルマイノリティや近親相姦を交えた2人3人4人芝居で構成される短編集。無機質な雰囲気のテーブルであったり、シンプルなローベッドであったりというシンプルな舞台で演じられます。
「ふいに〜」は目の前にいる男が本当に愛している相手が自分ではないのを知っていて、でもそれでもよくて。会話が進むうちに、女が愛しているのもまた男ではなくて、愛している女そのものに自分がなりたいというねじれっぷり。表面的にはこの二人は愛し合ってる体裁だけれど、その向こう側に共有する恋人がいる、というのはちょっとした物語の驚き。女を演じた堤千穂は可愛らしく、しかも真っ直ぐ。目の前に居る男の向こう側に見えている恋愛対象という意味では会話していないという役という意味で役者としての孤独な作業をしっかりと。男を演じた杉木隆幸、こちらも真っ直ぐにしかし自分の事を多くは語らないというのは男、という造形をしっかり。この二人がテーブルを挟んで会話するというシーンが、実にねっとりと色っぽいのが新たな発見なのです。
「くろい〜」は女を取り合う女たち、若さゆえか取り合いされる強気の女というちょっとヤな感じをめぐりつつ、もうひとつ、近親相姦であったりあるいは経済力という軸があとから次々と出てくるのは少々後出しじゃんけん感はあれど、そのカオスな感じがおもしろかったりもします。
「ステディ」は同性愛の男ふたり、片方に惚れた女、レズビアンの女というセクシャルマイノリティを置いた物語ではあるのだけれど、この中でマイノリティではない性的指向を持つ女という役がすごい 。それは性的指向として理解できないことを「このノーマルでない人々であって、そうでない自分は正しい」というバイアスに凝り固まっていて、 何を云っても自分たちに都合のいいことしか聞こえないというバイアスでしかしゃべれない女というのがすごい。 会話を書くのが仕事の劇作家なのに、こんなに長い時間「会話にならない人物」を舞台の上に置き続けるという腕力。それを演じたるとみやまあゆみも共犯者だけれど、きっちりと。 聴いているだけのワタシですらいらつく会話で頭がおかしくなるよう。 レズビアンの女を演じた木下祐子、髪型やキャラクタがいつもとはひと味もふた味もちがって、しかし説得力と魅力のある人物なのです。
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