【芝居】「ないものねだりの I want you」恥骨
2015.12.20 13:00 [CoRich]
90分。20日までSTスポット。
別れた男の楽しい日々の思い出を封印しても新しい一歩を踏み出せない女。ある日目の前で動き出したゴミの山のような物体は、別れた男との思い出の塊だった。男との日々を繰り返す。が、未来を見てばかりで一日経つと記憶をなくし、自分を見てくれない男に対して投げつけてしまった言葉を再び発してしまう。
私を見ない未来ばかりみていて記憶をなくす男、と記憶に囚われるばかりで前に進めないワタシ(女)をめぐる片思いを核に進む物語。そもそもフられてるし、SNSでいいね!がいっぱいもらえるモテる女とか、自分のことを見てくれる優しい男はいるけれど、ワタシには二人しか居ないし、フられたとしてもすべてはこの二人との距離である世界。彼女にとっては世界がそう見えてるというデフォルメが楽しい。とりわけ、いいね!が欲しい(承認欲求の強い)女の造型は強烈で、男があきらめられずに鬱々としている主人公とのコントラストも鮮やかなうえに、モテてやや天狗気味だけれど同性から総スカンというわけでもなさそうな絶妙なバランスが巧い。
この枠組みの中に現れたゴミの塊・ハッカ。自分と元カレの思い出が詰まったあれこれ。頑固なシミ汚れのようにそれが残っていること。主人公自身からみえている、このままではいけないという冷静な視線を思わせるもう一人の主人公の姿なのです。
自分の想いとは裏腹に先へ先へと進んでしまう男、ついていこうと選択したというよりはそうすることが当たり前に振り回されてしまう女。 物語としてまったく異なるのだけれど、主人公ばかりが過剰に努力をしてあきらめきれずに追いかけてしまうのはどこか孤独なのです。なぜかキャラメルボックスの一連の「クロノスジョウンター」の物語を思い起こしてしまうのはまあ、きっと気のせい。
後半にさしかかり、そこにリズムが重なっていきます。ラップのように言葉を重ねるのは規模は小さいながら、「わが星」が想起されます。止まっていた時間が先にすすむかもしれない予兆、なるほど終幕に至り、ハッカにこびりついていたすべてが消え、過去の男を断ち切り、前へ一歩踏み出すという物語は前向きで力強い。
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