【芝居】「walk in closet」iaku
2015.11.22 14:05 [CoRich]
大阪発の関西弁現代口語の濃密な会話劇の切れ味は相変わらず。 兵庫のあと、吉祥寺シアターで22日まで。 95分。
バブル期に開発された住宅地に住んで20年になる夫婦と大学生の息子。近所の女性が妻と話をしに来ているが夕方になって強い豪雨になってきた。夫は町内会の会合に出ていたが、帰れなくなった知り合いを連れてくる。息子はバイト先から戻れなくなり店長に車で送ってもらったが、雨はいっそう酷くなり、もう一人のアルバイトと一緒にこの家に避難してきている。
息子のアルバイト先は雑誌に乗るようなおしゃれなカフェだが、店長がゲイだという噂が広がっている。町内会から一緒に戻ってきた男はかつて体操教室のコーチだったが女児に対する噂を息子に流されて仕事を辞めるざるを得なくなっている。
母親は少し前に息子のクローゼットからゲイのビデオを見つけて動揺しているがまだ話すことができない。
性自認を公表していない状態をいう「クローゼット」という単語に「踏み込む」物語。かなり厳しい状態のぎりぎりの会話だけれど、暴風雨で河川が氾濫しようかという状態を設定することで、自分から出て行けということも気に入らない人物をこの場から退場させることもできない、という一つの部屋でのリアルタイムでの濃密な会話の90分越があっという間なのです。
息子がホモセクシュアルだということを受け入れたくない母親、 新聞によれば同性愛に対する行政の対応などもはじまってきていていることは見聞きしていて、 世間で起きていることとしては受け入れられるぐらいには一般的にはなっているということは判っているけれど、それがいざ身内の問題として、自分の息子がそうであることを受け入れられるかというのは今の時代の空気感によくあっているバランスなのです。そういう意味では、このタイミングだからこそ成立する精密で細やかだけれど、脆弱という絶妙さ。
微妙な問題ゆえにそっとしておいてさわらない、という立場をとり続ける父親、母親はもうすこし身内として踏み込みたい感じ。父親が過去の負い目もあって連れてきた男は序盤から中盤にかけて(酒の力も借りてとはいえ)執拗に息子やアルバイト先への露骨なヘイトを繰り返します。彼にはそうせずにはいられない報復的な気持ちの衝動があってということも説明され、その矛先となる息子にも、なぜあのときに貶めるようなことを言ったのかという理由がちゃんとあって。それぞれの立場だったり過去の体験だったりが、それぞれバラバラで。 会話の端々にボケ・ツッコミかのような軽妙なリズムだったり合いの手のような言葉が挟まったり。関西弁だから、という思考停止には陥りたくないけれど、深刻な会話の中でもこのリズムや笑いを自然に挟み込めるのは、iakuのすごさで、それは今作においても変わりません。
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