« 【芝居】「君がいた星」アンティークス | トップページ | 【芝居】「我が猥褻、罪なき罪」MCR »

2015.11.17

【芝居】「ヒミツの花園」BOCA BoccA

2015.11.8 19:00 [CoRich]

9日までOFF OFFシアター。100分。

久々にあった幼なじみ三人。ヤクザに追われている一人をかくまおうとチラシで見つけた破格で住み込みの仕事を見つける。自分を白雪姫だと信じている女と見守る親戚の男の生活の世話が彼らの仕事だった。ある日、女の姉だと名乗る女と元カレが現れる。

本人にとっては重大でも、ごく小さなきっかけで白雪姫というファンタジーに逃げ込んだ女。序盤に白雪姫を簡単に描き、それに続いて巻き込まれた人々が描く形で、少々イタい感じに白雪姫で居続ける女を描く前半。毒リンゴを持った継母ならぬ姉と、隣国の王子ならぬ元恋人という一人の優男をめぐり、姉の妊娠を誤解して身を引く形で白雪姫に閉じこもったという、この奇っ怪なファンタジーの枠組みを種明かしのようにかたる中盤。

いくら金持ちでなんとかなるといっても白雪姫に閉じこもり続けるというのはいくらなんでも、というのは言わないのが吉。順風満帆にみえたのが毒リンゴで大きく躓き、しかし「待ち(眠り)続けるだけで」王子が現れて一発逆転のハッピーエンド、という白雪姫の物語に自分を当てはめたことが、この騒ぎのアングルなのだと描きます。そのきっかけとなったのが姉の妊娠と思われたものは閉経だったのだというのは実は物語の本筋ではないのに少々深刻なアイテムだけれど、このややこしい三角関係も、閉じこもった白雪姫の物語もあっさり終わらせるという機能は確かに。意識されているかどうか「女が終わる」ということが物語に深みを与えるようでもあります。

これで一つの物語のような形にはなっているのだけれど、そこで物語は終わりません。現在の女性が描く物語、としての真骨頂はここからで、物わかり良く幕引きしようとする「白雪姫」に対して、地味に暮らしている主婦が一気にキレてまくしたてるところが痛快で、作家の視点を感じるところ。そんなことを続けている貴方は被害者じゃなくて加害者なのだ、自分を傷つけないために他人を傷つけてるし、ここで待ち続けて居ればワタシの幸せはやってくる、というのはまさに「白雪姫」であり、そんなのくそ食らえ、というところが実に見応えがあるのです。

ここで最低の男を引き受けてあっさり物語から退場する王子というのも実は巧くて、全てが終わってしまって意気消沈する姉妹と男たち。さきほどキレた主婦に再び渇を入れさせてもう一山つくります。何かを失ったとしても全部なかったことにする自暴自棄をやめなさい、あるいは女が終わったなんて言わせない、自分を可哀想ぶってないで自分のために戦え、代わりの効かないワタシに出会う誰かがそこにいるはずだ、という強いメッセージ。それは白雪姫が単に待ち続けているのとは真逆のありかただけれど、そうあろう、と力強く後押しするのは、ダサいほどにストレート、やっと喧嘩できた姉妹がこの閉塞をもしかしたら乗り越えられるのかもしれないのです。それを「ハイホー♪」と歌い上げるというのがもう、なんというかすごい。

終幕ではもうひとつ。小さな恋心の存在を静かに提示して、近くにあった小さな幸せに気付く、というのは 優しく、しかしもしかしたらある種の諦めというか折り合いのつけようなのだ、という塩梅がほろ苦く、大人の雰囲気。

白雪姫を演じた田辺麻美は、少し勝ち気でしかしファンタジーで、というバランスによくあった配役。変わらないのが嬉しい( 1, 2)。 面倒を見てきた男を演じたちうりは、終幕のダンスシーンはオジサンにとってのファンタジーで実にかっこいい。王子を演じた安東桂吾は中盤かき回すだけかき回して、最低男を一手に引き受けて颯爽と去って行くという役割も、それをやっちゃいそうだという優男風の説得力もいい。キレる主婦を演じた竹原千恵(検索)様々な役を観てきた中でも実に見応え。

|

« 【芝居】「君がいた星」アンティークス | トップページ | 【芝居】「我が猥褻、罪なき罪」MCR »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【芝居】「ヒミツの花園」BOCA BoccA:

« 【芝居】「君がいた星」アンティークス | トップページ | 【芝居】「我が猥褻、罪なき罪」MCR »