【芝居】「授業」双身機関 (第20回まつもと演劇祭)
2015.10.30 21:00 [CoRich]
愛知の劇団による、イヨネスコの不条理劇を二人芝居で。 11月1日までピカデリーホール。45分。 この演目、ワタシは風琴工房 (1) による上演を観ていますが、この時は女優の肢体に目を奪われまくって記憶が曖昧というていたらくです。
若い女性が個人教授を受けに初老の教授を訪ねてくる。下手に出ていた教授だが、やがて女性が算数の引き算を理解していないことがわかり、教授は興奮していく
本来は教授・女学生・女中の三人の登場人物だけれど、女学生を抜いて上演する、という趣向。 最初の15分はほぼ一人の観客を相手にしながら、あくまで下手に、しかし濃密にねちっこく教えていくという序盤。 一度の暗転を経て女学生役の観客を離れ、ボレロが流れる中、女学生抜きで、 教師は台詞を発しない(というよりは発している台詞が観客には聞こえない)という流れで進みます。 勝手に激高し、大仰に体を動かしている「教師」の姿はやがて、「自分にはまったくわからないことを大声でわめきたてて激昂していく男」、しかし教えようとしていることはこれっぽちも生徒である自分には届かず、目の前のことなのに絵空事のような他人事になっていること。それは滑稽にも映るのです。以前の上演では客観的に見えていた教師と学生の関係が、自分に向けられているという視点の転換が新鮮なのです。
正直にいえば、暗転のあと、無言劇っぽい作り方になった時点で見えたように思えた着地点からはそう遠くはない終幕で、こういうトリックな作り方をするがゆえに高まった期待値に対して、観ている最中はやや肩すかしをくらった、と思ったのだけれど、後からこうして感想にしてみるとじわじわくる緻密さに舌を巻くのです。
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