【芝居「君ガ咲ク街」空想≠カニバル×劇空間夢幻工房 (第20回まつもと演劇祭)
2015.10.31 16:30 [CoRich]
長野市の演劇団体二つによるクロスオーバーユニット。60分。
謎の外国人に渡された薬によって瀕死の重傷から奇跡的に命をとりとめたヤクザはさらに超能力を手に入れる。敵対する勢力が抗争をしかけてきていて、その中にも能力者が居る。壊滅状態の組を背負い一人戦いを挑むヤクザはずっと知らなかった兄弟も親もまた能力を持っていることを知る。恋人は敵に捕らえられ、そして命を落とすが。
ヤクザの抗争という枠組みに超能力というSFを組み合わせた物語。若者がSFを読まなくなったとはいわれても、ちゃんと息づくちから。今回のラインナップ、アングラだったり、繊細でコンパクトなスケッチのような上演が多い中では、声を張る発声や明確にデフォルメされたキャラ設定など、笑いも多くてわかりやすくエンタメを指向した作りで見やすく、気楽に楽しめる一本なのです。
松本という場所で旅してきてまで観たいか、という点では確かに難しいところではあるのだけれど、劇場に通う習慣がない観客に対してのリーチ、という意味では見やすくお手頃なエンタメというのは確かに重要で、なるほど観客だって大盛り上がりに楽しんでいて。
あっという間に殺されたと思ったら剥製にされる、というやくざを演じた富井沙里が楽しい。もちろん表情も、どこか情けない風情という瞬間も。恋人・六花を演じた金田渚は可愛らしく、男との身長の落差も楽しい。幕切れ、花屋のシーンも実にいいのです。
ネタバレ
主要な役が次々と命を落としていくバッドエンドに向かって突き進んだ物語は、終幕に至り、主人公が時空を越え恋人と初めて出会った花屋のロッカーに跳躍するというエンディングに。それまでの物語をくるりとひっくり返してハッピーエンドに見せるのもエンタメ王道な作りで、これもまた芝居の一つの姿。たとえばキャラメルボックスでの時間を跳躍するいくつかの物語に似たあと味なのです。
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