【イベント】「汗」(月いちリーディング / 15年11月)劇作家協会
2015.11.14 18:00 [CoRich]
2014年9月に初演された短編のブラッシュアップ企画。初演時にはカットされた部分の復活もあるようです。いつものように60分ほどのリーディングのあとにラウンドテーブルで。戯曲冒頭部がサイトで公開されています。
初演も観ているのですが、 どこかそこはかとない違和感があったのです。このラウンドテーブルに参加したことでなんとなくそれが形になってわかった気がします。43歳の男は高校生の時果たして殴ったのか事故だったのか、それからの数十年何もしていなかったのか、つきあっている若い恋人は何のつもりなのか、あるいはこの男にたかってくる社会人野球の監督にどうしてここまで尽くすのか。コーチを命じられた時に打撃だけしか考えないほど凝り固まってしまったのはなぜなのか。「因果関係が描かれない」ためにそれぞれが唐突だったりどうしてこうなったのかがわからなかったり。
初演で主役を演じた役者は、人のいい中年男というまさにその雰囲気に加えて、笑顔で腰が低いけれど何を考えているかわからない感じがよくあっていて、その因果関係の描かれなさが「そういうもの」と納得してしまうような感じだったりしたのですが、今回のフラットなリーディングでは違和感が増したのかもしれません。
ラウンドテーブルで作家が語ったのは、バッティングという姿は「一人で黙々とできること」という意味の描き方なのだそう。おそらくはあの「事故」で人と一緒に何かをするということを極力避けてきて、それゆえにあの時に時間が止まってしまって成長してこなかったということかな、と思ったり。野球用品をたかる社会人野球の監督は悪役には描かれているけれど、したいことを実現するための努力なのだということはわかるし大人にはなっているのがそれに対比されて描かれているとも思えるのです。
終幕、殴ってけがをさせた男とのキャッチボールは、一人だった長い長い時間が溶け、一歩進めるようになったということを予感させます。謝罪の言葉がないという違和感を抱く指摘もありましたが、わたしは「互いにわざとやったことを自覚している」から、むしろ謝れないという気がしますがどうだろう。
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