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2015.10.11

【芝居】「野良な犬ほど夜光る」ぬいぐるみハンター

2015.10.3 18:30 [CoRich]

5日まで駅前劇場。105分。

終電後のターミナル駅。カミサマと呼ばれる男の許に集まってくる人々。制止する駅員、ホームレス風で威勢のいい男と女、カミサマにスーツを着た男も呼ばれる。カミサマは犬を探していて、女子高生は人を捜している。

人通りの絶える終電後の駅。 カミサマと呼ばれる男に会いたくて夜な夜な集まるホームレスたち。自殺未遂した妻から逃げてきた男、あるいは結婚詐欺師だった男と惚れ込んだ女というホームレスのカップル。ホームレスじゃないけれど、働いているんだか怪しい清掃の男、あるいは若く純朴な駅員(に見える男。駅員かもしれない)。

余命幾ばくもないホームレス、舞台には現れないけれど自殺未遂の妻という死と隣り合わせの二人の女。それを愛する男たちはそれゆえ逃げてしまったり寄り添い続けることを決めたり。 それぞれの向き合い方(あるいは向き合わないこと)。カミサマが探している犬、というのもそういう意味では死と隣り合わせの位置。そもそもが生きるのにかつかつだったりな、ある種底辺な人々だけれど、真剣に人を愛すると決めた男たちは凛々しくて。

子供たち、あるいは子供のころの風景を疾走感を持って描くことが得意だった(あれはあれで好きなアタシですが)作家だけれど、役者の入れ替わりゆえか、都会の片隅で目立たず生きる人々のある瞬間を描く今作は今の私たちに向き合うように描かれた物語に脱皮したようで新たな見応えがあります。かつての疾走感の中にもあった繊細さというかセンチメンタルさは今作においても健在で気持ちが静かに揺らされるのです。

東方力丸は下北沢や井の頭公園などでみかける、路上で漫画を読んで聞かせるパフォーマンスの彼ですが、その風貌と深夜の駅というシチュエーション、あるいは強く張った声など、カミサマという雰囲気をきっちりと。チンピラを演じた辻修は笑いをとりつつきっちりまっすぐな男、暫くぶりに拝見してみればもちろん年齢を重ねていて、それがいい味わいで好演。怪しくふわふわとした清掃員を演じた安東信助、ああこういう雰囲気で怪しいオジサンっても悪い歳の取り方ではないなと思ってしまうあたしも相当なもの。

今作のもう一つの魅力はセットなのです。小田急線の新宿駅、各停の停まる下層ホームな雰囲気。もっともトイレの表示は京王風に見えるのはご愛敬。ほどよい暗さ、朝でも深夜でもそういう場所に見える(地下駅だから実は変わらないんだけど)という説得力というのもあって、今作においてはセットも雄弁にこの物語を支えているのです。

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