【芝居】「想いはブーン」小松台東
2015.10.11 14:00 [CoRich]
東京から宮崎の実家に戻り、兄の紹介で電気工事店で働いている男だが、口べたで仕事に対する意欲もなく三ヶ月経っても同僚からの評価は低い。社長は会社を継いでもらうため三人の娘には電気工事の現場の社員と結婚してほしいと考えているが、長女は結婚はしているが水商売、次女は社員とつきあった後に英会話教室を営む男と結婚、三女は幼なじみの男から言い寄られているが、その東京から戻ってきた男とつきあっている。
当日パンフによれば、自分はどうにも苦手だった電気工事会社の雰囲気を描いたのだといいます。地方都市・宮崎を舞台にしてある種の閉塞感としかし懸命に働き生きる人々の営みを描くのは作家の得意とするところ。
地元で働き続けモノになったけれど、恋とか結婚には恵まれてない男。この会社の跡取りを期待され夢見てるけれど、この家の娘たちと結婚ということにもならず。おそらくはそれずっと長い時間のこの場所を作ってきたのでしょう。上京していた弟が戻り、仕事を世話してやったのに、仕事を覚えるでもなく真剣さもなく、そのうえあろうことかこの家の娘とちゃっかり恋仲になっているとなれば理不尽も感じましょう。
弟はなにも会社を手に入れたいとかそういう気持ちで恋仲になってるわけじゃなくて、不器用ででも自然体で恋におちているのだろうけれど、たぶんそんなことは兄にとっては関係なくて。 娘たちは娘たちで、それぞれの道。水商売だったり、恋破れた隙に結婚した相手はもちろんいい夫だけれど、遠い日の花火な気持ちも忘れられなかったり。三女にいたっては、姉たちが成し遂げられなかった、この会社を継く電気工を婿に迎えたいという理不尽な期待もあったりして。
さらには幼なじみでずっと恋心を描いている男や、妻の浮気を疑って心が引き裂かれそうになっている男もまた、理不尽のただ中にあるのです。 方向はバラバラなれど、みんなどこか理不尽でもやもやした気持ちをかかえ、しかしそれに折り合いをつけて日常を送っている、という人々の物語なのだなぁと思うのです。
佐藤達大暴れなんかひねくれたオジサンがいい。相関図の絵もかわいらしく、そしてわかりやすい。 山田百次は木訥、ああ本当に好きなんだしまわりからもそう思われてたんだなという近所の幼なじみの造形。 序盤の松本哲也の軽口が物語を力強く始動します。 異儀田夏葉がほんとうにかわいらしい。何でもうけとめるという感じでもあって力強さも兼ね備え、いいお嫁さんになる予感を感じさせて。 兄を演じた瓜生和成がほんとうにかっこいい。ちゃんと年齢を重ねたオヤジな造形で、わりと拗ねたキャラクタの多い役者でそれも得意技だけれど、それとは違う今作もとてもいいのです。 尾倉ケント、ちゃんと子供が居て生活してという「きちんとした人」感、しっかり。
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