【芝居】「天邪鬼」柿喰う客
2015.9.22 14:00 [CoRich]
23日まで本多劇場、その後に兵庫、岐阜。100分。
桃太郎やるものこの指とまれ、と仲間を集める子供。だが、集まる子供たちはイマジネイションによって防御を行う戦争にかり出された兵士たちだった。
どれが本当の物語かをさらりとかわし続ける語り口。序盤では桃太郎になりきり捕らわれ離れられない一人、おそらくは同じ部隊に属する兵士たち。中盤ではその背景、その一人が物語の中に居続けることで強力な力を持つに至ったことを描きます。
斜めに傾斜のついた八百屋舞台、横一列に並んで見せたり時におどけてみせたり、あるいは何が物語の軸かさっぱりわからないままに進む物語という性質は、どこか「朝日のような夕日をつれて」の雰囲気を纏います。が、成長期でどこまでも底抜けの明るさの世間の中の孤独を描いていた「朝日」に対して、戦争、格差、子供への暴力という世界の中で唯一自分の心を守れるはずの想像力(イマジネイション)ですら、権力の道具に使われてしまうという今作には絶望感を感じるアタシなのです。
あるいは、物語に捕らわれること、その強力な力を自覚的に描くという意味では後藤ひろひとの遊気舎時代の「人間風車」を見るような感じでもあります。どちらの過去の作品とも異なるのは、スタイリッシュというかストイックが勝る感じもあって、それゆえにわりといい席で拝見したわりには、ワタシからは物語が遠く感じるところだったりもするのです。劇団員だけの公演だからこそできるということかもしれません。そういえば(1, 2) もずいぶんとストイックだった印象があります。
主人公を演じた玉置玲央はものがたりにどっぷりで抜けられない子供をきっちりと。今作ではベテランが支え、永島敬三、大村わたる、葉丸あすかといった若い世代がそれぞれの役をきちんと軸を持ち立ち続ける役を対等に担っています。初期のメンバーがまとめて抜けたけれど、きちんと劇団として役者を育ててきたという成果を観るようで、まるで親戚のオジサンのようにうれしくなってしまうのです。とりわけ表情が豊かで目立つ舞台だなと思っていたら、桃太郎に対して裏表となる狼少年を演じた大村わたるが印象に残ります。
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