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2015.09.23

【芝居】「プラスチックプール」waqu:iraz

2015.9.17 15:00 [CoRich]

ワクイラズの特性であるスタイリッシュなダンスをダンサブルな音楽に乗せて、そこにちょっと拗らせた女たちの短編を紡ぐ95分。20日まで空洞。

女たちが集い「永遠の水辺で」(ダンス)
トラックの運転手をしている女、朝、ラジオからは交通情報「青空の底1」
商店街でお針子をしている女、学生の頃からつきあって結婚した夫には難の不満もない 「あともう一度だけ」
女子高生、姉は厳しいこというけれど門限が守れないし、ご飯食べて誘われたら断れないし、趣味は地面占い 「アスファルトの継ぎ目がただの三角に見えるかケーキに見えるか」
女子高生は街で男と待ち合わせることになっているが電話を受けて先に部屋に入ることにして「窓のない部屋1」
東ティモール、米・中の女性たちと相部屋になったカメラマンの女。もっと話せと促され、自分は恋人から結婚を申し込まれたから旅行に来た、という「ドミトリーにて」
閉架担当の司書、職場でもつきあいが悪いと思われているのはわかっているが、ギリシャ神話の女神たちの話がおもしろくてハマっている。職場の噂話が好きな女たちによく似てるじゃないか「みんな繋がっている」
あまりに眠いので休憩しよう。ラジオから聞こえてくる投稿/痴漢にあってから男が怖くて就活は全滅でラブホの清掃スタッフになっていて「青空の底2/窓のない部屋2」
内勤の営業補助、不倫から抜け出せない先輩と窘める後輩 「自分を大切にね」
妹が仕切って応援して。何食べた?けれど妹とイタリアンレストランに居たのは「トーフラバー」
いつでも店にいると近所でも噂のレジ係はレシートからメッセージを受け取る。「宇宙からの手紙」
トラックドライバーは働かない男と暮らしを支えている。いつかかわるかしら「青空の底3」 「ふたたび永遠の水辺で/すべてのコントロールは必要ない」

コの字型の客席に舞台はフレームを組み込んだシンプルな作り。女優たちは時に可愛らしく、時に大人の雰囲気でかなり大量のダンスを作り込んでいます。ダンスが苦手なアタシだけれど、物語の比率が大きいからか、物語・ダンスともそれぞれのピースが小さいおかげか、見やすく楽しめる一本なのです。

ダンスは美しさもさることながら、ややテンポの早いダンスミュージックやジャズ風味の音楽も格好良く、スタイリッシュで本当に格好良く。正直にいえば、基本的には正面から見るように作られているのは、この客席配置だとちょっと残念な感じは残りますが、大した問題ではありません。正面から取られた舞台写真を見ると、ああなるほど、水槽のような「プール」なのか。

一つ一つの物語は、何かの変化を描いたり、何かが解決したりする物語というよりは、そういう造形の人物たち、をゆるやかに繋いで描くフォーマットになっています。まあ、それにしても集めたなぁ、というぐらいに様々なレベルで拗らせた女たち。誰かが云ってたけれど、アタシが大好きな感じ。作家が書くものが作家を反映するわけではないけれど、こうも拗らせ女子ばかりが並ぶと、作家は大丈夫なのか、いい恋してほしいと、彼女のプライベートを何も知らないくせにお節介な気持ちになってしまうアタシです。

「青空〜」は3つのパート。生放送のAMラジオの声にいちいち反応しちゃう運転手な序盤、眠すぎて危ない運転との中盤、彼女自身の話の終盤。この中では唯一フィジカルな「労働者」で地味なTシャツ姿だけれど、終幕の美しさが際だちます。ドライバーを演じた土屋咲登子のガテンな姿がかっこいい。

「〜一度だけ」はどこから見ても上品で絵本の世界との境界線のような「お直しのお針子」をする女性、誰もがうらやむ幸せに忍び寄る隙。あくまでも表向きの上品さ、内側に秘める気持ちの動きを細やかに。演じた原田優理子はおだやかさな造形で可愛らしく作るだけに、内側に何があるんだろうと思わせる一種の怖さがあります。

「アスファルト〜」は援交する女子高生の半笑いの一人語りがベース。その先の何かをあきらめているのか、それとも何も考えていないのかどちらとも取れる絶妙の表情。演じた尾崎冴子は軽やかなステップ、少しばかり小憎らしいしゃべり方が印象的です。

「窓のない〜」は二つのパートに別れ、前半で女子高生の援助交際を見送る女という片鱗を店、後半はラブホスタッフという彼女自身の話として、痴漢にあった男性恐怖症とそれに耐えるための盗癖を持つ女。深刻な話で、そんな簡単に救われることはないのだけれど、山丸莉菜が演じたどこかポップに話す造型は、後半の「自分を〜」と組になってどこか救われるように思えるのです。

「ドミトリー〜」は外国のドミトリー。まじめな日本人!につっこむ米国・中国の女性たち。カタコトで喋っても恋だの結婚だの、という言葉が聞こえれば盛り上がる、というのは万国共通なのかどうなのか。 「求婚されたから、旅にでた」ということのおかしさなんだけれど、それを外国語行うことで、もしかしたら聞き間違えたのではだって理屈が通らないし、という体裁になっているのが一工夫で巧い。カメラマンを演じた長尾純子は真面目な感じに、中国人を演じた尾崎冴子はクールビューティなアジア人、米国人・武井希未はパワフル、ちょっとずかずかくる欧米人の造型。

「〜繋がっている」は職場の女たちが奔放なギリシャ神話の女神たちに見える、という静かに暮らしたい図書館司書の女の話。司書を演じた武井希未は前パートとはうってかわっての造型で落差に驚きます。

「自分を〜」はまるでジェーン・スーかと思わせる、不倫にハマる女がそれを断ち切る勇気と笑顔。そんな恋をしていても幸せだといっていても、それを鋭くつっこむ女が「窓の〜」で男性恐怖症だった女という形になっていて、失敗続きだった就活だけど就職してよかったと思ったりもしつつ。彼からの連絡は直前で、前日に来る連絡は合えない、というのがヤケにリアル。杉村誠子が演じる不倫にハマる女が勇気を持ってメールを送る、それに続いて笑い合う女たち、というシーンが実にいいのです。

「トーフ〜」は「アスファルト〜」に対応するかたちで、奔放な妹をみつづけている摂食障害の姉の話なのだけれど、それゆえか、何を食べたのか、ということを尋ね続けるのは、もがき続け地得るようで苦しい。妹がイタリアンレストランに一緒に居た男は、姉の恋人か、はたまた片想いか。桑原史香は台詞は少なく、ダンス・身体表現を中心に演じるけれど、どちらかというといわゆるアニメ声に近い可愛らしい声も実は印象的。

「宇宙から〜」はレジ打ちのプロフェッショナル、レシートから何かのメッセージを読み取るという「ヤバい」女の話は、全体の中ではSFなのか、単にやばいのかというのもわからずに、異質なのだけれど、「青空〜」パートでラジオDJを演じたりという関森絵美で振れ幅を印象づけます。

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