【芝居】「TATAMI」KUNIO
2015.8.26 19:30 [CoRich]
30日までKAAT(神奈川芸術劇場)・大スタジオ。110分。
息子が久しぶりに、父親が一人で暮らす実家を訪ねると、父親は全てをたたむ、といいはじめている。家財も家も、自分すらも畳みたい、というのだ。母親は亡くなっている。
広い空間に大きく若草色のシート、中央にTATAMIという文字。人生後半にさしかかり、すべてを「畳む」ことに心酔してしまった父親。年を取ったらモノを捨てていこう、身軽になっていきたいという口癖なのはアタシの母親ばかりでないのだなぁ、というのがアタシの感覚。捨てるとか手放すのからは少しずらして、しかし「店を畳む」のように撤収する感覚でもあって。その名詞形の「たたみ」をタイトルとするのは芸事とか武道のような「たたみ道」に繋がるようで巧いと思うのです。何かを「返して」何かを「畳んで」いくという感覚は、人生後半にさしかかろうとしているアタシにはとても腑に落ちるけれど、若い作家がこういう老成した雰囲気の物語を描く、というのはどういう心持ちなのだろう、とおもったり。
父親がおかしなことをしていて、それを止めようとするというのも一種現実っぽいけれど、ときおり差し込まれる、記憶も無く足も立たなくなっている場面は全体の風景の後日譚なのか、この厳しい現実の日々に「たたみ」に血道を上げる父親の姿を夢想したか。
ヘルパーを演じた森下亮の異質なもの、あるいは超越した何者かという雰囲気は、クロムモリブデンでも観られるキャラクタですが、さすがの安定。
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