【芝居】「深海大戦争」パラドックス定数
2015.9.12 14:00 [CoRich]
13日まで上野ストアハウス100分。終演後、これは前編ということにしたい、と申し訳なさそうにいう主宰ですが、なかなかにエンタメ。
北極海、氷山の近く。すべての海を手中に収めんとしているクジラの王。かつてシャチに知恵を授けられたという伝説を信じ、今もシャチを腹心に力で海を制圧しているが、その息子は争いによらず、対話で平和を維持しようと考えていて考えが会わない。近くには大王イカの棲む海域があり、食物連鎖の関係にはあるが、均衡が維持されてきた。
ある日、その北の海に南極から皇帝ペンギンが泳ぎ着く。大王イカの親子と出会い、暮らしているが、「皇帝」の名を恐れるクジラは、大王イカもろとも殲滅しようと考える。イカの大王の弟はずっとしゃべれないままだったが、氷山から滑り落ちた「鋼の鳥」に知恵を感じて、それを手に入れることで自分たちは進化するのだ、と固執しはじめる。
絶対的に存在する食物連鎖を受け入れること、そこに現在の私たちだったり、あるいは自分たちが扱える以上の強大な力を手にすることの危うさ。 無言の動きだけで、全段となる伝説のものがたり。 ダジャレも含めて軽い語り口で見やすい中盤、そのうちに、物語はおもいのほか、争いの起こるプロセスであったり萌芽を丁寧に描くのです。外交官、東京裁判とはまったく違う語り口だけれど、史実を下敷きにするのではなく、人間がどういう思考のプロセスを経て戦争に至るのか、という一類型をコンパクトに描いていて、そういう意味では確かにあたしの友人の云う童話なのだなあと思ったりもするのですが、童話は物事をシンプルに見せるという効果もあるので、アタシには見やすい。
後半は人間が作ってしまったものの怖さが見え隠れ。その「鋼の鳥」の抱えていた卵(エンジンか、あるいは)が海底で青白く光っているのを何かで閉じ込めることでカジュアルに持ち歩いて卵を放つ、というのは続編への不穏な繋がりか。
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