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2015.09.28

【芝居】「ホテル・ミラクル2」feblabo

2015.9.19 14:00 [CoRich]

歌舞伎調のラブホテルの一室を舞台にした4本コンピレーション。95分。

大雨から逃れるために入った先輩後輩。携帯の電源は切ってください。「本番の前に」(前説)
互いに愛しているが夫の不全で3年間没交渉の夫婦。夫は一計を案じて別の夫婦との交換を画策する。 「こうかん」(作・米内山陽子)
売れない作家がホテルにデリヘル嬢を呼ぶ。安部公房を読んだりする、という。作家はまだ何者にもなれず他の人とは違うということをずっと考えているが 「砂と棒」(作・裕本恭)
女子高生は姉がファンだという歌手とTwitterで仲良くなり、ホテルの一室で会うことに成功する。初恋している相手は居るのだけれど初恋は実らないから、この男と練習して意中の相手とうまくいきたいのだという。 「初恋は消耗品」(作・ハセガワアユム)
見下していた男に口説かれてホテルの一室。東京湾には巨大怪獣が現れ、街を破壊している。だからこそ男はこれが最後とばかりに口説いた。女は別の男の事が好き、そのつもりで抱かれるのでもいいというが。 「獣、あるいは近づくのが早すぎる」(作・服部紘二)

ベッドとソファ、イスとテーブルが少し離れて配置。シンプルな雰囲気 でホテルの一室を作り出しつつ、枕元に2個のコンドームというアイテムだけできっちりラブホテルの一室にしてしまいます。

「こうかん」は勃たなくなった夫が案じた夫婦交換プレイ。唐突にすぎる解決策に混乱し拒絶する妻だけれど、単に雑に淫乱というだけではない相手夫婦の事情や細やかな気持ちが寄り添うことで変化していく、という過程。「はじまったところで終わっちゃった」と感じてしまったのは、なんかAV的に見えてしまってその先がありそう、と思ってしまったからだと後から密かに反省するアタシです。人物の心なり気持ちなりが変化したことを描いたこの部分こそが物語で、そこを細やかにきちんと描きます。

「砂と棒」はまだ何者にもなれない男の自分探し、文学を志しそれが自分の特質だけれどまだ認められてない悔しさ。その裏返しなのかストレスの発散なのか、金を払うという行為によって自分の立場を上に見せたいという尊大さ。金をもらう側だからとある程度は受け入れる女。当たり前のことだけれど、彼女だってきちんと知性もプライドもある一人の人間で、その二者の攻防を描きますが、女自身もまた胸が豊かという「人にはない自分の特質」があると思っても、「この店ではそれもまた普通」という一つの台詞で、決して突出してすごいわけではなくて、たくさんの人間が居ればそのくくり方次第でオンリーワンになったりならなかったりして、その中でどう折り合いをつけていくのかという生き方の構図を提示するよう。

「初恋は消耗品」は作家らしく例によってぶっ飛んだ設定。初恋は実らないもの、というある種のノスタルジックな考えを出発点に、だからレベル下げた練習台でよくね?という発想をする女子高生は前半どこか大人っぽくナニサマな雰囲気で優位に立とうとするけれど、恋人っぽいことを重ねた後半、別れるという段になってどっぷり恋にハマってしまう幼さがかわいらしい。元々好きだった姉の元旦那、このタレントがかつて付き合っていた女というぐあいに、物語の外側に更に二人を設定し、一回りして捻れてる感じは少々綺麗すぎるまとめ方ではあるけれど、コンパクトで見やすく印象に残るのも事実で難しいところ。

「獣、あるいは近づくのが早すぎる」もまたある種、マウンティングの話というか、気が弱い男が最後の勇気を振り絞って手が届きそうにない女子への告白、あるいはこういう特殊な状況だからなのか、女もいままで見下していたのに抱かれてもいいという。夢と云えば夢、だけれどそこから何の希望もない終末感。

綺麗な女優があんなことしてみたり、あれこれしてみたり、駆け引きしてみたり、あるいは性癖を見せたり、なんてことをしてくれてる、と幻想を抱かせてもらう、というのがこの芝居に対する観劇オジサンとしてのアタシの立ち位置ですが、やはり年齢に近い感じ受けるからか、「こうかん」がわりと気持ちとしては近く。あるいは「初恋〜」はその眩しさが懐かしく感じてしまうのです。

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