【芝居】「1980'」野生児童
2015.8.29 14:00 [CoRich]
王子小劇場の若手応援企画。一人による劇団の旗揚げ公演。31日まで王子小劇場。
長男が家をでた後の家族、双子の次男と長女、次女と父母。列車ででかけた家族旅行で事故に遭ってから数年。家族の心の傷は癒えつつあったが、長女はこの家に居る兄弟と週イチで通ってくるカウンセラーに違和感を感じている。
久しぶりに再会した幼なじみの家へ、実家をでて転がり込む。誘われて行ったライブで目にしたボーカルと恋人になる。両親に恋人を紹介しようと久しぶりに実家を訪れる。
長女を主役に語られる物語は大きく二つの題材を扱います。 前半は台湾生まれの母親と日本人の父親のハーフであること、それで苦労する母親の話。後半はこの家族が事故にあってから数年を経ていて、通ってくるカウンセラーや兄弟たちに感じる違和感から家を出ていくという話。 前半、おそらくは作家自身が経験した何かを描いていて、おそらく彼女にとってとても大切なコアなのだろうと思います。が、 あれだけ取り上げた台湾とかハーフであることが、実は後半ではほとんどふれられることがなく、かといって長女の行動を縛るということでもなく、結果的にそのままほったらかしになっているのが惜しい。 作家にとって大切な話ならばそれを幹に描かないと、もったいないと思うのです。
後半、事故を巡って起きていたことの物語はみっしりと描きこまれていて、見応えがあります。
ネタバレ
家族のニコイチ(wikipedia)、しかも名前も変えてという治療が行われていることを芝居で役者を入れ替えて、という演出。 これを治療として今の日本で行えるということに対しては何かの補助線がないと、こういうことが起こり得るということに納得しづらいのは残念。 バンドボーカルと恋に落ちて同棲しているのであれば、起こり得るもっと深刻な近親相姦に対してすべてスルーというのも気にかかるところです。
とはいえ、いろいろ気になることはあれど、濃密に詰め込んだ物語であることは間違いなく。また、 さまざまなことがすべて気にならなくなるほどに、長男を演じた佐野功が本当にかっこいい。優しい兄貴とかっこいいボーカル、そして恋人と、時にアクションのようなシーンもあったりしていろんな属性を通して見る彼は本当に魅力的なのです。
事故のシーンは二つの家族が受けた物理的な衝撃、そこでなくなった人々を象徴的に見せるシーン。ちょっとキャラメルボックスな雰囲気でもあってごく短く台詞もないけれど、リズムの重ね方が絶妙。死者にはバツを付けて送る、として死んだことを表現するのはシンプルで説明的ですが、コンパクトでわかりやすく、どこか無機質な描き方なのも、フラットでこのシーンにはよくあっています。
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