【イベント】「シャワー」(月いちリーディング / 15年9月)日本劇作家協会
2015.9.12 18:00 [CoRich]
すでに一度上演をしていて、再演にむけてのブラッシュアップというふれこみ。冒頭部があらかじめネットで公開されていて、約2時間弱のリーディング、1時間弱で観客交えての討論というスタイル。ustreamの中継と録画(1ヶ月の限定)、解散後にだれでも参加可能な懇親会が設定されています。
「穴」の入り口を警備するヒューマノイド。周囲は住めなくなっていて、遠くに見えるプラントは廃炉の為の研究施設になっている。 ヒューマノイドは大量に降り注ぐそれの影響からか、クラウドとの記憶のマッチングに違和感を感じているが、更新プログラムが送られてくる気配はない。人々の暮らしは厳しく、研究施設で働こうと思う人々がいる反面、そこを逃げ出してくる人々も居るが、砂漠ばかりのなか、ヒューマノイドと出会う。
原子炉廃炉、住めない場所、回らない経済で生活もままならない搾取される側とエリートの側。あるいはエリートに這い上がった側。さらに人間、クローン、ロボット(ヒューマノイド)というもう一つの階級軸という差別の問題も取り込んで語られる物語。この舞台設定から想像できるとおり、いまどきの日本に渦巻く負の側面の話題を数多く盛り込んでいます。
おそらくは作家の問題意識が及ぶ問題を数多く入れた結果、それぞれの問題意識は見えるものの、その中で翻弄される人々という意味でも全体に人物が平均化してしまう感じは正直残ります。リーディングなので衣装や位置関係を頼りにできないなど演出の助けを借りられないという側面はありますが、それゆえに、この戯曲の生の姿があらわになる、という怖さも感じるのです。
初演はもちろんこちらが先なのだけれど、映画・マッドマックスFRこと怒りのデスロードに近い印象を受けました。子供を産む為の女、働かせる男、水の貴重さなどの題材が重なります。
討論は説明のしすぎかどうか、その問題をどう扱うかについての部分が多く占めました。ファシリテータは頑張ったといえます。俺ならこう演出する、というプランを示すゲスト(ロボット三原則から始めればわかる、というのは同感です)やクローン技術に詳し過ぎるゲストなど、丁々発止のやりとりも楽しいけれど、戯曲のブラッシュアップを目指すという目的の会ならば、今回に関して云えば戯曲に対する意見のバリエーションという点では少々心許なかった感じは残ります。
半分しか聴けなかったと前置きして最後に意見を述べた坂手洋二は、作家の問題意識も迷いもそのまま描かれていて情報を提示することを躊躇う気持ちがある(のでそれはそれで大切なことだ)といい、それはその通りで、しかしそれは観客を引っ張るためのアジェンダが分散してしまうということかもと感じたのです。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「静流、白むまで行け」かるがも団地(2023.11.25)
- 【芝居】「〜マジカル♡びっくり♧どっきり♢ミステリー♤ツアー〜」麦の会(2023.11.25)
- 【芝居】「未開の議場 2023」萩島商店街青年部(2023.11.19)
- 【芝居】「夜明け前」オフィスリコ(2023.11.19)
- 【芝居】「好男子の行方」オフィスリコ(2023.11.12)
コメント