【芝居】「時をかける少女」キャラメルボックス
2015.8.2 14:00 [CoRich]
50年前にジュブナイル小説として発表された原作から、いくつものテレビドラマ、アニメを含む4本の映画化を経て、初めての舞台化。115分。 9日までサンシャイン劇場。そのあと大阪。
夏休み、手術を控えて入院する伯母と祖父の面倒を見るために5年ぶりにに上京することに決めた女子高生。隣の家族の住む息子は幼なじみだが、大学で伯母の教え子として薬学を学んでいる。使われていない研究室で人影をみたと思った女子高生は、ラベンダーの香りとともに気を失ったあと、時間を遡行する能力を身につけたことを知る。
私の世代にとっては、原田知世・大林宣彦監督による角川映画版が強烈な印象ですが、2000年に入ってからの2本の映画は、原作での主役・芳山和子に緩やかに繋がりながらもタイムリープの能力を手に入れた女子高生を巡る物語に翻案されるようになってきています。本作もこれに近い流れで、芳山和子は1983年版の最後に語られ、2010年版でそうなった薬学を学ぶようにはなっていたり、封じられたはずの記憶が戻るという2010年版の物語のポイントは同じです。が、2010年版とは違って独身で、基本的には2000年以降の物語にはリンクしないつくり。もっとも2000年以降のそれぞれは、原作ではあくまで静かで受け身でありつづけた女子高生は行動的になり物語をぐいぐいと引っ張っていて、それと同じ21世紀の語り口になっています。
ネタバレ
記憶を封じられていても、どこかにひっかかりがあったのか独身のまま四十代になっている芳山和子、また会いに来るという約束を果たしていた深町一夫という原作の二人を物語の根底に据えます。 物語のヒロインはどこかコミカルですが何度も自分の意志でタイムリープし問題を解決していこうと走り回りまわり、しかし、伯母の物語と同じように、この時代に潜り込み、人々の記憶を偽造しながら暮らしていた男の存在は、元々の物語の外側にもう一つ相似形の物語を作り出すのです。
原作に思い入れのない人々ににこの物語の構造がどう映るかはとても興味がありますが、アタシにとっては原作のいくつかの設定をつまみ食いしたというよりは、構造も含めて写し取った見事さを終盤に至って気づくのです。
アタシにとってのヒロインはやはり芳山和子であり、キャラメルでの数々のヒロインでアタシの涙腺を崩壊させてきた坂口理恵なのです。気づくまで24年もかかってしまった、と泣く彼女にはやはり涙腺が。若手にしてヒロインとなった木村玲衣は、気持ちの疾走感、やや調子に乗ってイラっとさせる雰囲気が見事で印象に残ります。大内厚雄の結婚できない男っぽさはまあいろいろ思い当たる節もあるアタシですが、あれだけかっこよいので説得力がないのはまあご愛敬。久々登場の近江谷太朗は、戻ってくる、という役を体現するような配役がいい。
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