« 【芝居】「猫と洞窟と夏についての試論」feblaboプロデュース | トップページ | 【芝居】「彼らの敵」ミナモザ »

2015.08.03

【芝居】「ピカデリー・ショート・ミュージアムin2015サマー」ピカデリー・ショート・ミュージアム実行委員会

2015.7.26 10:00 [CoRich]

30分での上演を一日で二回上演する企画公演。去年に続き二回目ですが、アタシは初めて拝見します。26日まで。

色街。人気の、しかし鬼と呼ばれた太夫の周りの人々の心には闇が巣くう。「よるのいろ」(天邪鬼)
記憶を毎日なくして目覚める女、その傍らにいつもいる女は好意を寄せているのに報われない。彼女も知らない秘密があるのだ「忘却の海」(ほめっ娘)
女性の元に届いた手紙は椅子職人からの告白だった。/新築の集合住宅に引っ越した男は天井裏に上がって隣家を覗けることに気づく。「乱歩リーディングシアター・「人間椅子」「屋根裏の散歩者」」(幻想劇場◎経帷子+バリカタで!!)
第一新聞部を支えていた副部長は多くのメンバーとともに引き抜かれてしまう。学校内での存在感を高めるためのスクープが絶対に必要なのだ/友達からの虫取り勝負を受けてしまった子供は父親に泣きつく/遠くで聞こえる音、どこかのんびりした男二人「Pの時代」「夏の昼下がりのハードコア(PSM版)」(ピストンズ)
製薬会社の面接を待つ三人。時間はとうにすぎているのに始まらない。何かを試されてる?実は人体実験なんていう都市伝説もあるけれど。「遠心ポンプ」(れんげでごはん)
新幹線延伸と御開帳の今だからこそ一気にゼンコージャーも組織して城下町を攻め落とすと息巻く門前町の市長。でも、攻勢が。 「OPTIMAL」(空想≠カニバル)
エレベータが止まり、エレベータガールはパニックを起こす。深海での生活のために食料生産システムが開発される。巨大なゴマ豆腐を作ってしまった豆腐屋。二組の駕籠舁き、片方はお姫様もう片方は空っぽ。「PARA-BOX」(照り焼きプリン)

秋の演劇祭では60分枠の同時多発にしているのに対して、もっとコンパクトに一つの舞台で短編を半日で一通り見られるようにつくられている一日限りのイベント。大きなセットは作れませんから、正方形の台を二つという共通のセットに、短時間でセットできる簡単な装置で上演という形態。演劇に限らないイベントですが、リーディングが一組あるほかは、コントっぽいものは混じりつつも、基本的には演劇です。このコンパクトさも捨てがたい。

天邪鬼は伝奇っぽい枠組みにしっかりとチャンバラで華やかに。物語の焦点が鬼たる太夫なのかと思えばそうでもなく、短時間のわりにちょっとわかりにくい感じがあるのはもったいない気がします。

ほめっ娘はいわゆる「頭の中の消しゴム」もの。繰り返し記憶を失うものと見守り続ける側の寂しさ。もう一工夫をして、まるで時計の長針と短針、あるいは自転と公転のように入れ子になる構造のワンアイディアは秀逸なのだけれど、30分の尺ではディテールを描くには短く、アイディアのインパクトという点では長くて難しいところ。

「乱歩リーディングシアター」の二本はリーディングに役者たちが作るシーン。プロジェクターをリアプロジェクションで。正面のスクリーンが消えると奥から魑魅魍魎が出てくるようなラストが美しい。

ピストンズは、三人の俳優が組み合わせを替えながらいくつかの二人芝居を交互につくりあげていきます。時にコントのようであり、時にノスタルジックな場面であったりと描かれていく物語は、 それぞれがちゃんと繋がってるというわけではなくて、別モノの物語を並列して見せているような不思議さ。 なによりそのそれぞれの場面で役者を入れ替え視点を切り替えるさまがスピーディーで、リズムがよくて30分の中で濃密に物語が紡がれる面白さなのです。新聞部の起死回生をかけたUFO撮影の今さら感もやけに作り込まれた感じが楽しいし、息子の虫取り勝負にあおられた厳格に見える父親が本気になっていくグラデーションの繊細さに奥行きを感じます。遠くの爆発音で会話をする二人の男、花火のようだと思っていると、それが実は爆撃を受けている町の出来事で、戦争が終わったらジャーナリストになりたいという話だったり恋心の話だったり、この今の瞬間に描かれることで、現実の危うさに不思議にリンクするような濃さがあります。若い作演だろうに、まるでシティーボーイズのようなどこか枯れた味わいが面白い。

れんげでごはん、は新しい役者を加えて新たな出発という印象。就活生たちの都市伝説的な想像や恐れ、会社側は面接官の寝坊を隠し通そうとしたり、自分の雇用が危ないと感じた社員がバイアスをかけたり、とそれぞれの立場で持ちうる情報のギャップをすこしばかり誇張して見せることで、そこから生まれる笑いをテンポよく詰め込みます。 この手のショーケース企画では勢いとか笑いが巧くはまったときには有利で、その意味で成功しているのです。

空想≠カニバルは、まあ仲が悪いと云われがちな長野市・善光寺を中心とする北信と松本市・松本城を中心とする中信それぞれの自負心と自慢する気持ちの対立。ゼンコージャーなる戦隊が出てきたり、城下町軍が攻めてくる、みたいなライトな描き方は、渡辺源四郎商店の県立戦隊・アオモレンジャー( 1, 2, 3, 4, 5) みたいな感じだし、むしろ長野県で戦えるのはゼンコージャーじゃないかと妄想したりも。それでも内心は城下町勢に心奪われていて、松本ぼんぼんという市街地上げての夏祭りで盛り上げるというのは、まあ、卑怯なやり方ではあるけれど、客席は圧倒的に盛り上がっていて、これはその地区でゆえに成立するおもしろさ。

今回すべての劇団で共通に用意された舞台装置は、設置された二つの正方形の台。彼らはこの二つの台を時に停止してしまったエレベーター、時に巨大ゴマ豆腐、時に駕籠と見立てて濃密で盛りだくさんなナンセンス仕立て。それを無理矢理にでも一つにまとめ上げようという終盤の無茶ぶり感もすごいし、それでも停滞させることなく、エレベータの箱から一歩もでられないエレガにすっと着地させる力わざをきっちりとなしとげる役者たちも魅力なのです。

|

« 【芝居】「猫と洞窟と夏についての試論」feblaboプロデュース | トップページ | 【芝居】「彼らの敵」ミナモザ »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【芝居】「ピカデリー・ショート・ミュージアムin2015サマー」ピカデリー・ショート・ミュージアム実行委員会:

« 【芝居】「猫と洞窟と夏についての試論」feblaboプロデュース | トップページ | 【芝居】「彼らの敵」ミナモザ »