【芝居】「ペール・ギュント」KAAT神奈川芸術劇場
2015.7.13 19:00 [CoRich]
イプセンの戯曲(wikipedia, 楠山正雄 訳)。ワタシは初見です。谷賢一の翻訳・上演台本の物語は休憩15分を挟み全体で195分でも飽きさせません。
初めて入ったKAATのホール。おそらくは普段は見えないエリアまで広い舞台にして、奥には大きな窓。時折爆撃音のようなものが聞こえています。どこか廃工場のような雰囲気。 圧巻の広さ。3F席ですが、むしろ俯瞰できて楽しい。 若い頃を描く前半、まだ何者にもなっていないけれど、何者かというより王になれると信じる男、一度は振った女を略奪してみたり、 トロル(妖精)の娘に気に入られて王になれるならと結婚すると言ってみたりと、まあ中二をこじらせたままのような感じではあります。 休憩を挟んで後半は、成長して財もなしていて。それを失っても預言者になってみたり、あるいは精神病院の患者たちに祭り上げられたりもする。波瀾万丈すぎる人生、不屈の精神力というよりはぎらぎらした野心でわずかなきっかけをモノにする力というか。主役を演じた内博貴はこの重い役をきっちり演じています。前半はあまり違和感がないのだけれど、後半の造型に対しては少々若すぎる印象があるのは惜しいといえば惜しい。
いつまでも成長出来ないという意味ではこの歳になって、なんか気持ちが寄り添います。自分を褒めてくれる狭いコミュニティの居心地の良さ、あるいは一人になっても頑張って生きる姿。そういう意味ではずっと待ち続けていてくれた女も見事な物語。
ずっと見守り続けている視線。医療スタッフのようないでたちの人々、あるいは保育器や手術に使うようなライトが出てきます。楽団もまた役者たちに見つめられるシーンがいくつか。 終幕、保育器の周りに居るスタッフ。もうおそらくは生きられない赤ん坊が生かされている間にみたつかの間の波瀾万丈の夢、という枠組みかな、と思います。
窓の外に聞こえる爆発音は何だろう、ギリシャの戦争か、ギリシャも戦争も、偶然だろうけれど、タイムリー。
正直、アタシの席からは舞台は少々遠いけれど、桑原裕子、辰巳智秋はもうほんとにこの距離でもしっかりオーラの出てくる役者になったのだなと今さら思ったりします。大きな舞台をあまり見ないから今さらなんですが。まあ、顔や声を知っているから、ということはあるかもしれないのですが。 -->
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