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2015.07.03

【イベント】「ずぶ濡れのハト」(月いちリーディング / 15年6月)劇作家協会

2015.6.27 18:00 [CoRich]

戯曲をリーディングで上演し、劇作家たち、観客たちがラウンドテーブル形式で議論することで戯曲のブラッシュアップをねらうワークショップ企画。年に数回開催されてるようですが、ワタシは初めての参加です。今回は11月の上演を目指す『ずぶ濡れのハト』(作:南出謙吾)。全体で休憩を挟み180分ほど。座・高円寺地下けいこ場。サイトでは、戯曲の冒頭と、当日の様子のUSTREAMが期限付きで公開されています。座・高円寺の地下3階にある稽古場の一つを利用して開催。

地方のスーパーのバックヤード。反対運動むなしく、隣町にショッピングセンターが作られる。それは店に壊滅的な打撃を与える。が、それはスーパーが進出して来た頃に、この商店街が同じようなことになっていたのだ。が、時間は経ち、商店街とのわだかまりも解けている。

そう多くない人数、狭いコミュニティの中でありそうな話。沈みゆく船の中で些細な抵抗はするけれど、逃げ出す人、逃げられない立場、そんな状況でも女に手を出しまくる男、ずっと何かを抱えている人。現在のアタシの気持ちにリンクするところが多くて、ありそうなこと、やけにリアリティがあるいろんな人々。コラボ弁当のような一時的な好転があっても、やはり最終的には沈むしかない場所。それは諦観なのか、それとも目先しか見えてないのか。静かに進む物語。

ショッピングセンターと小さな地元スーパーという枠組みに、いろんな人々が居るという体裁ですが、そういう場所があった、ということ以上には強く物語が進む、というわけではありません。それが決して悪いわけではないけれど、何処を楽しめるのかは観ている側に依存する感じがします。正直にいえば、65分の上演で5つの季節、その中でもいくつかの時間に区切られていて、少々細かく千切りすぎという感じがしないでもありません。

一列に並んでリーディング、休憩を挟んでラウンドテーブルで戯曲について議論するというフォーマット。読むための役者は居るけれど、この場は「戯曲」について集中するということが徹底していて新鮮な体験です。作家、コーディネータ、ファシリテータ、ゲストが中心に進めますが、特に名乗ることもなく一般の客も意見をいっていいという雰囲気は、ラウンドテーブルという形も、壇上をつくらずフラットな場にしていることもあいまって、非常に効果的に創り出されているのです。あらかじめ配られるディスカッション・シートは議論の進め方に従って、①作品のよい点を挙げる、②作者から会場の皆様への質問、③皆様から作者への質問、④フリートークという流れでメモが出来るようになっています。ブラッシュアップのやりかたの教科書のよう。

議論では、作家から、「まるくまとまってしまった物語をもっと衝撃的なものにしたい」という趣旨の発言。誰かがショッピングセンターにツッコむか、みたいな飛躍の提案も面白い。店長がつっこむ、というのが議論の序盤の雰囲気だったけれど、終盤に至り物語の中で不穏で何かをしそうな怖さがあるのは、精肉店を潰されこの店で働いている職人肌の精肉部チーフではないか、という議論に到達し、ああ、我が意を得たりと思ったり。議論が自分の思う方向に行くとなんか面白い。

あるいは「ショッピングセンター」という一般名詞で会話をするのは違和感がないか、という議論もあって、全体的には違和感無しという方向で、違和感ありに手を挙げたのはアタシ一人でした。あれれ。1年以上の時間のなかで、ずっと「ショッピングセンター」という一般名詞では会話しないだろうというのが、アタシの感覚なんだけれど。最大のテナントの名前か、あるいはこういうモールにつくような愛称で会話するんじゃないのかなぁ。どうだろ。

ともあれ、新鮮な感覚が楽しい。終了後に誰でも参加可能な懇親会があるというのも、まあ、もうちょっと酒呑んで語りたいという気持ちの受け皿になってくれそうでうれしいのです。

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