【芝居】「女と幸せ」辻川ストロベリー
2015.5.27 19:30 [CoRich]
辻川幸代の生誕50周年を記念して、3人の作家による5本の短編と間をつなぐ映像で構成する125分。 31日まで駅前劇場。
普通がイヤだと思って自分を変えるためにえいやと選んだ高校は個性派スケバンの巣窟だった。「私立毒蜘蛛女学院」(作・演出 太田善也)
気軽な間柄の友人たち。家呑みも楽しい。実は私には奇跡が起きていて、これから先、平穏な人生か刺激的な人生かを選ぶことが出来るが、選ぶともう女友達を手放さなければいけないという。「50歳の奇跡」(作・演出 辻川幸代)
精密検査の結果を告げられる。肺ガンで、もって半年なのだという。患者を送り出し、同級生の医者は泣く。「辻川幸代の、もっとも長い日 パート1」(作・演出 大野敏哉)
喫茶店の女、待ち合わせに現れた夫は離婚を告げる。君が悪いんじゃない、若い女が好きで君は歳をとったからだという。刀を抜いて、ゾンビ化して。[かわいそうじゃない」(作・演出 太田善也)
親友のバーを訪ねる女は余命を告げられているが言い出せない。店にいるカップルの女は彼氏に詰られている。ベビーカーを押してきた女はストレスがたまっていて苛ついている。女たちを励ます、うざったいぐらいに。「辻川幸代の、もっとも長い日 パート2」(作・演出 大野敏哉)
3人の作家による5つの短編と、リアルな辻川幸代のまわりの人々を描くドキュメンタリービデオで構成。 物語の中では割と結婚できない独身、みたいな描かれ方をしていても、リアルはきちんと支え合うパートナーが居たり、という具合の、表と裏。
正直にいって、辻川幸代は味わいはあってぴったりはまる役、というのはあっても、決して器用な役者ではありません。その周りにいる人々、役者や作家がこれだけ集い、あるいはプライベートの恩師、両親、夫、という人々に支えられている、ということが見えてきます。それは確かに生誕半世紀を迎えた彼女という存在そのものに面白さを感じる観客(アタシですがw)にとってはパーティーで祝うような気持ちにはなるのです。
しかし、これが芝居として面白かったかといえば、少々厳しいのです。 「私立〜」は出落ち感満載で華やかだけれど、コントほどにも突き抜け損ねていて残念。「50歳〜」は最もフラットな一本で、夢の中に出てきた男たちが現実に現れるという不思議風味の物語。女子たちの会話のシーンは結構好きだったりしますし、二つの未来があって一つを選ぶという枠組みはいいけれど、もう一押し欲しい。「〜もっとも長い日」というもう一人の作家の名作(実は未見)に似たタイトルを冠する「〜パート1」は男が女に対して抱く熱い想いをどう濃密に創り出すかという役者の芝居の勝負だけれど、物語としては平板な印象が勝ります。終盤で看護婦かと思っていた女性が医師が夫婦だと明かされるのはコントラストでもあるし、男が想っている女の存在すらも受け入れてしまう妻の造型は説得力があります。「かわいそう〜」は、独身で年嵩の女の存在、それは可哀想ではなくて、人々に関わりあう、いわゆる「おばちゃん」力という賛美だけれど、この作家ならもっともっと、と思ってしまいます。これで一本行けそう。「〜パート2」は続編の体裁だけれど、実は繋がっていないし、一つ前のどこか似たシチュエーションなのが惜しい。戦友とも呼べそうな女友達がいる前向きな感じは好きです。
一本目で教師を演じた 安東桂吾が落ち着き、ちょっとかっこいい。おなじ一本目の舘智子はそういえば肉感的なのを再認識してしまうのです。二本目の座組では若い側の菊池美里のアラフォー後輩っぽい感じも楽しい。役者として拝見するのはアタシには久しぶりの川原安紀子のフラットさも懐かしく。
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