【芝居】「やぶれた虹のなおしかた」こゆび侍
2015.6.20 19:00 [CoRich]
130分。21日まで駅前劇場。
高校生の頃、偶然心が入れ替わってしまった男女は、それを受け入れ会わないまま25年が経った。女は結婚し娘ができて、喫茶店を開いている。男は職場の女性と付き合っているが妊娠を告げられ動揺し仕事を辞めてしまう。男は高校の用務員として働くことになるが、そこで出会ったのは、かつての自分の身体を持った女の娘だった。
発端となる物語は「転校生」★だけれど、そのまま大人になって、家族が出来たり出来てなかったり、という長い時間を経ての物語。戻ってみようかと試してみたりもするけれど正直、元に戻ることが幸せなのか、もう長い時間つき合ってきた身体より、元の自分の身体がどうなってるかだってわからないし。長い時間を経て、なじむ、という感覚だけれど、それは身体と心だけじゃなくて、周りの人々やその人々への想いがいくつもの層に重なるのです。
頑なにあわなかった二人が再会し、かといって何があるでもなく。それまでの気持ちや経験の言葉を交わして。ある意味自分の家族たちよりもずっと切実に近い人ではあるけれど、それは恋とか愛とかとは違う関係なのです。
喫茶店主(背乃じゅん)の友人(小園茉奈)が物語というか着地点の要だと思います。女子高生の親友だったからこそ、相手の身体の中身があの時の親友じゃないことに気づいているし、あるいはもう一度会った親友の中身にほどける気持ちというのもあって。借りっぱなしになっていたものを返す、というのは象徴的で巧くて、この長い時間、再会するのを待っていた、という時間の流れ。
喫茶店を営む女を演じた背乃じゅんは、ある種おばちゃんぽく、日々をきちんと暮らしてきた女の造形をしっかり。男の彼女を演じた宮本奈津美はびっくりするぐらいにショートカット、可愛らしく、美しく。特筆すべきは女の女子高生以来の親友を演じた小園茉奈なのです。正直、42歳という設定に対してはあまりに若いけれど、ちゃんと落ち着いていること、説得力をもって語れるスキルががいい方向に働いているのです。
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