【芝居】「ラフカット2015」プラチナ・ペーパーズ
2015.6.14 14:00 [CoRich]
ベテランの作家・演出家と、若い役者が出会う企画。 10分の休憩を挟み130分。14日まで、スペースゼロ。
ステーキハウスのバックヤード。アメリカ風味の元気な接客が売りの店で長年つとめているリーダー格の女の少しから周りする元気をうざったく思っているバイトも多い。
「カウボーイ、道に迷う」(作・演出 堤泰之)
終電の風景。後輩に説教気味なキャリア女、夫に三行半を突きつけて出てきたものの小さな子供を抱えて途方にくれる女、就活に行き詰まっているがみかけた面接官に話しかける必死な女、客から急に突きつけられた変更に苦慮する広告代理店男、帰宅途中のキャバ嬢をみつけて口説こうと考える客、★、時々鋭いことを云う酔っぱらい、目つきの鋭いヤンキー風。子供。
それぞれの事情、時折交わりかけるけれどそれ以上は接近しない人々。気持ちはやがて一つの列車になり、空を飛ぶ「終電座」(原案・谷山浩子 脚本・演出 工藤千夏)
地方都市の喫茶店。姉は出戻ってきているが、顔見知りばかりの小さな町で出られずにいる。高校の同窓生たちが久々に集まったりしている。東京に出てお笑いをめざす女が相方を連れて地元を訪れた。産科の息子に折り入って頼みがあるという。厳しくちょっととっつきにくい教師は、この喫茶店の妹の添削を受けに通う。教師は沈んだ気持ちがもりあがったのは、学校でみかけたあるものがきっかけだった。果たして姉はあの時の。「踊り場のハイソックス」(脚本 塩田泰造)
デリヘル業者の事務所。半裸の男が二人縛られている。しかもその一人は女装下着をつけていて、しかもこの店のチンピラ男の父親だという。厳格な父親で、プロ野球の審判としてもかたくなな判定ゆえの世間からのバッシングで妻を亡くしているほどの、真面目な男だった。
この事務所の社長は敵が多く、命が狙われているという。「愚かなる人」(脚本・演出 太田善也)
「カウボーイ〜」は堤泰之の得意技、若い人々の交錯、ままならないこと、理不尽なことの物語。ステーキハウスのホール係とキッチン、辞めた女、辞める人、辞めることになる人。 この店をずっと支えてきたベテランバイトをうざったく思ってるバイトも多い。普通はそれだけだけれど、もう一歩踏み込んでそのベテランを辞めさせるにはどうしたら、という悪意。ネットの噂を使うというのも、それに反撃するためにフォロアーの多いバイトが応援を頼むというのも今っぽい。しかも、店長が辞めた女と、という色恋が絡むというのも重層感があって見応えがあります。物語の語り口はあくまで軽く。辞めていた女を演じた蓮菜貴子はまあ色っぽいこと。不思議なバイトを演じた星耕介はどれを理不尽と感じるところがずれているのが楽しいし、正論をいうのもそれっぽい。 アンラッキー、と呼ばれている女を演じた小宮山未奈は高いテンションを前半維持しつつ、しかし終幕でちょっと店を忘れられない未練もいい。
「終電座」は谷山浩子の曲を舞台で創り出します。沢山の人々、それぞれの背景や想い。映像ならばカットバックで次々と見せるところ、正直、舞台で繰り返すのは効率はよくありません。電車の車内で皆が何か聞こえたような気がする、という奇跡が起これば、電車だって空を飛ぶのです。それを銀河鉄道の夜に繋げたのは工藤千夏の手腕でしょう。そこに死ぬこと生きることといえば大げさだけど、暮らしていくことがきちんと根ざしてる舞台なのです。キャリアの女を演じた天明留理子はラフカットのレベルじゃない役者だけれど、最初にそこにアンカーがある安心。就活生を演じた中込里菜はうざったいぐらいの一生懸命さ、これから生きていく、というバイタルが溢れていて。
休憩を挟んで「踊り場〜」は久々に逢う人々、東京に出て行った女が戻ってきて、助けてと言われたら助けちゃう男心を外してみたり、出戻りだから外に行けないまま実家の喫茶店に居るけれど、が、そこに再会出来るのは高校の教師で。高校の男性教諭が踊り場で女子生徒のハイソックスをみてしまって、学校に毎日いくモチベーションになる、というのはオジサン的にはいい話だなーとおもうし、単にそれで終わらず、その女子高生が出戻ってきて、またここで出会って、しかもセーラー服で階段を降りてくる、という奇跡はまあ、ハッピーエンドなんでしょう。見やすい物語の運び。高校の同窓生たちの物語上の役者の人数が役に対してやや過剰な感じはあるのはやや残念だけれど、あまり大きな問題ではありません。
「愚か〜」は出落ち感満載の半裸で縛られる男たちがまず楽しい。前半で語られる野球の審判、そこからカタブツに見えてた父親の隠された性癖の落差、くるくると殺し屋の疑いがかけられる終盤など緩急のリズムが抜群で、客席が沸き立つのです。終幕、そう、真面目でなければならない、という外面と愚かに感じる性癖の落差で苦しむことなどない、というのをコメディでなく優しい作家の視線と感じてしまうアタシはどうなんだ。父親を演じた西本泰輔はカッコイイのにブラ姿の落差からきちんと父親でもあって。息子を演じた藤村直樹は若いチンピラ感が目一杯。父親と会話をぎこちなく交わす距離感がいい。スカウトされてきた女を演じた宍戸レオナの不思議ちゃん目一杯、しかもやけに手慣れてるのも楽しいし、終盤に至ってクールにカッコイイ、これも落差。
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