【芝居】「バルタン」studio salt
2015.5.14 19:30 [CoRich]
17日まで神奈川県立青少年センター・多目的ホール。70分。
その部屋では男たちが監禁され、二人の若い女の監視下で小さな立方体を作る作業をしている。
何かの不始末があると、この中から一人を選び、一枚写真を撮ってから部屋を出て「バルタン」に行く。
新しく入った若い男は自信なさげだが、女たちは少しこの男を意識しはじめている。これはチャンスだ。
当日パンフに添付されているインタビュー記事を読むと、元々は劇団員たちの底上げをはかるため、外部の演出家を招いたワークショップが起点のようです。その発表会のために座付き作家が書いた戯曲で上演するという企画。
物語というよりは、人々をめぐるいくつかの関係を提示してみせるような作り。一方的に支配する女子高生たち、支配されるオジサンたちの関係だったり、唐突に始まる鬼ごっこで負けた一人が「バルタン」に行かされるということだったり。 この支配関係じたいも、この部屋の外で起きている何かの力によって強いられている、ということは匂わされますが、その詳細は語られません。彼らがしている作業は小型爆弾の製造、という感じで、それを用いた自爆テロをしているらしいことも匂わせています。
そこで匂わされているのは、 たとえば昨今の少年たちのイジメというよりは集団リンチに近い暴力的な関係だったり、あるいは自爆テロや恐怖による支配という点でISとの相似形というか箱庭のようにぎゅっとこの小さな空間に提示してみせる力。いくつかの関係の点描はされて、それは現実の何かの暗喩だということも感じる反面、正直に云えば物語の推進力という点では少々食い足りなくて、この人々がなぜそうなったのか、その人がどうしてそういう行動に至ったのが見えてこないのは残念なところ。
椎名泉水によるスタジオソルトの芝居は、家族を中心としたどちらかというと暖かな物語の路線と、閉塞し絶望する人々を救いなく描く路線の二つがあります。今作は後者で、そういう意味では初めてアタシがこの劇団をみてその救いの無さに驚いた「キヨシコノヨル」や「7」に近い印象を持ちます。
味のある役者が多いこの劇団ですが、スキル向上を目指して 劇団員のためのワークショップを5ヶ月続けた効果というのは確かにでていて、今作、少なくとも初日においては鷲尾良太郎がほんとうに良かったことに驚きます、自信にあふれ説得力がある人物がそこにはありました。もう一人若い男を演じた渡邉正臣もまた今作では目を引く一人で濃いめの顔立ち、しっかりした肉体だけれど、ワンピースを着てもすんなり似合ってしまう柔軟さに印象に残ります。
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