【芝居】「もっと超越した所へ。」 月刊 根本宗子
2015.5.10 14:30 [CoRich]
今まさに旬、という雰囲気。17日までスズナリ。90分。ほぼ完売だそうです。
元子役の芸能人の女の家にはオカマが同居している。風俗嬢のもとに日々通う男は最近ではあまり売れていない俳優。生活は楽ではないけれど楽しく同棲の日々を続けるカップル。クラフト作家の女がtwitterで吐いた弱きを目にして支えるといって転がり込んで来た男はバンドのギタリストだが、金にもならないUstream中継ばかりにうつつを抜かしている。2年前の女たちは男のプライドや臆病、甲斐性の無さ、あるいは好意を受け入れて貰えないことに我慢がならず恋人と別れている。あの時と女たちの悩みは変わったけれど、もう我慢の限界を迎えて別れを告げるが、前と同じことを繰り返すばかりじゃないかと女たちは気付き、果たして奇跡は起こる。
田の字状に区切られた4つの部屋。それぞれの部屋に住んで(働いて)いる女たちと、その部屋に転がり込んだり通ったりしている恋人たち。芸能人ぶってるが自慢のはけ口がない男を受け止めたり、非の打ち所がないぐらいにいい男で好意に気付いてるのに恋愛関係にだけは進めないとか、稼ぐ気のないバンドマンが紐同然だったり、ラブラブだけれど出産や結婚だけは頑ななまでに進めないとか。いろんな意味でのダメんず。女はあの手この手でもう一歩先に進め幸せになりたいと思いながらも、男は変わる気も無いし変わらない。途中で一度、時間が過去に戻って描かれるのはそれぞれの2年前。女たちはその閉塞感と我慢の限界から男と一度別れているけれど、ダメんずたちはまるで回遊魚のように、そのダメのまま、何も変わらず組み合わせが変わっただけなのです。ダメんずと別れても、また別のダメんずを呼び寄せ、出会ってしまうのはまるでイケスのよう。
ネタバレかも
二つの恋愛を経験して、まさに別れてしまった、という瞬間を支点にして、女の底力でひっくり返すという終盤が見事です。出て行った男を呼び戻そう、というのは果たして奇跡を生んでしまうところからはじまって。そういう意味ではもうここからは物語とか想いとかではなくて、ファンタジー、という体裁にくるりとひっくり返るのが見事。
正直に云えば、結局は女が我慢して生活を維持しようという判断なのは、ここに描かれている、というのは女性の作家の立ち位置としていいのか、というのは考えなくはないのだけれど ダメ男たちへこんなではだめだ、5分戻そう、果たして奇跡。幸せは、赤いドレスに昇華して。 実際の所、ダメ男たちが変わることはないのでしょう。そういう意味では何も解決していない。女たちの心持ちが変化した、ということはいえるけれど、それは女たちが耐えている構図。それでも赤いドレスに昇華して、その瞬間に輝いているわたし、という終幕は、見せ方の破壊力とあいまって、力づくで物語をねじ伏せる力があります。
そういう意味ではシベリア少女鉄道を彷彿とさせるし、序盤は少しだけ国分寺大人倶楽部っぽかったりします。風俗嬢を演じる梨木智香はちょっと機械音痴な感じと相まって可愛らしい。ゲイを演じた小沢道成は圧巻の安定。どこまでもいい男、好意を遮断するという難しい役をきちんと造型。 ちょっとセレブな暮らしをしている女を演じた大竹沙絵子は、ちょっと不利な感じあるけれど、でもきちんと生活していくために必要なことをする、という女性の姿に説得力。
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