【芝居】「スーパーエンタープライズ」東京ハートブレイカーズ
2015.5.1 19:30 [CoRich]
110分。5分のアンコールが1曲。3日までスターパインズカフェ。ワタシは初見の劇団です。
入学式をサボって立ち入り禁止の屋上に来た新入生はある教師に出会い、空を飛べるか、という。屋上で活動している天文同好会の二人が開発しているロケットベルトを目にして、やってみたい、と云う。
厳しい訓練をくぐり抜けた三人だったが、試験飛行の日、パイロット候補だった男は跳ばないといい、地味でいじめられているこれを作った二人が跳ぶべきだと言いだし、仲違いしていまう。仲違いしてしまう。
30年前、同じ屋上。バンドで世界を変えるとまで云っていたボーカル、告白できない弱気なベース、あるいはあるいは世界を目指せるサッカーの選手や地味な転校生たちが集まったりしている。文化祭でのバンド活動を禁止されたバンドは、屋上でのゲリラライブを計画する。
連休前の平日。ちょっと会社を早退けして来てみれば、最近ではあまりないぐらいに女性ばかりの客席。今作では出演者が男性ばかりということも影響しているのかも知れません。
バブル景気と浮かれる1985年と、2015年という30年の時間を隔てた高校生たちの物語。 1985年の高校生たちは世界を手中にできるとすら思ってしまう万能感に溢れたバンドだったりサッカー選手。それはこの時代の日本という国の雰囲気にも重なります。文化祭での活動を禁止されて計画したルーフトップライブが敢行できないことの挫折。 それから30年、2015年に描かれる高校生たちは地道で臆病。しかしロケットベルトを作ってしまうまでには凄いのに、あと一歩が踏み出せないのです。そこにやってきた男はその一歩を踏み出せる男。失われた30年の国の雰囲気という感じがしないでもありませんが、ロケットベルトでほんとうに飛べるかもしれない幕切れは希望、という感じでしょうか。
つくば博(1985)、ロス五輪(1984)、Jリーグ前夜(1993)という時代の雰囲気、まさにそのときに高校生だったアタシ、バンドとかスポーツとは無縁だったからその万能感はわからないけれど、日本という国が何にでもなれそうに思う時代の空気はとても肌感覚としては理解できます。役者の多くもそれぐらいの年代なのでしょう。決して若くなくても学生服がまたちょっと似合う感じなのもいい。ロケットベルトという「夢の技術」が二つの時代を繋いでいる感じなのは面白い。 作演・黒澤世莉してはびっくりするぐらいに真っ直ぐな学園の物語で、ロックミュージカル風でもあって、新しい魅力を見つけた感じ。岡田達也、みのすけといった大劇場クラスの役者が軽々と、しかしエンジョイする感じで演じているのは楽しい。教師と高校生という時代を隔てた二役を演じた山崎彬はほどよく抑制が効いている芝居とラストナンバーではほぼ憑依したような感じのコントラスト。物語をしっかり回し、運んでいる力。むしろ若い方の役者であるあずの小多田直樹のコミカルで生真面目な感じもリズムを作ります。
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