【芝居】「消失点」JACROW
2015.5.16 14:00 [CoRich]
17日まで雑遊。105分。
母子家庭の母親が子供を家に置き去りにして子供が死んだ。小学校にも入れず、教師や児童相談所の声も届かず頑なに孤立していた。取り調べにあたった刑事は母親が子供を殺してしまったことを強く詰る。自分も妻が家を出て息子と二人暮らしを始めたところで、子供にどう接していいかわからない。
ただでさえ育児は母親にばかり負担を強いていて、ましてや母子家庭となれば経済的にも立ちゆかず、しかも周囲の支援を受けられなかったり、孤立してしまいがち、という実態。それは父子家庭でも起こり得ること。それが子供の死という無惨な結果になったことを物語の核に据えて濃密に描きます。
劇中の台詞にもあるように、(何かを責めようというのではなくて)それを繰り返さないために私たちは知る必要があるのだ、ということで貫かれた姿勢。児童相談所や教師、当の母親たち、それぞれが自分を責める人々に対して優しく、しかし大人の立ち位置を毅然と求める足場を持った物語は強固なのです。 あるいは、夫婦の問題は当事者の問題だけれど、子供のためには意地をはらずに自分が折れるという手段が取れるかどうか。
もちろん、これは物語という箱庭の中の出来事なのです。この世界には基本的には悪人やヒールが居なくて、それなのに子供が死んでしまう、ということ。現実は悪意がゼロ、とは行きませんから、それは現実全てを写しこんでいるとはいえませんが、こういう世界でも起こる悲劇を防ぐための大人の出来ることを悩み、探すのは(子供は居ないけれど)アタシたちがしなきゃいけないこと、だと思うのです。
時に激昂し時に思い悩む刑事を演じた谷仲恵輔は昨今堂々とした役者に育ったように思います。気持ちの不安定をきっちり演じるという確かなちから。ある意味それに対峙する被疑者を演じた松葉祥子を久々に舞台で拝見しましたが、何かを怖がるが故に細い身体を突っ張って吠える高いテンションを持続するという安定。代表作になったのでは、というアタシの友人の言葉に同感なアタシです。暗くなりがちな物語を時に軽く、あるいは緩めるのは署長を演じた吉田テツタと部下を演じた小平伸一郎。シリアスとコミカルのダイナミックレンジを広げています。もう一人頑なだった児童福祉課職員を演じた蒻崎今日子は仕事としてきついけれど、フラットで居続ける力強さを内包した造型。分析医を演じた中村暢明は、役者としては初めて拝見した気がしますが、まあ、怪しく、ちょっと狡い感じではあります。
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