« 【芝居】「ホテル・ミラクル」feblabo | トップページ | 【芝居】「長井古種 日月」あやめ十八番 »

2015.04.13

【芝居】「翔べ!原子力ロボむつ」タヌキ王国

2015.4.11 19:00 [CoRich]

渡辺源四郎商店の人気作 (1, 2) を上演。ここに限らず、青森中央高校での上演や、山口の劇団による上演など、広がりを見せているようです。90分。12日までピカデリーホール。

原発を持たない選択を積極的にしてきた松本市において、この物語の上演をすることの意味を考えるのです。

夢であってほしいと思わせる途方もない時間を過ごす男の孤独の物語はもちろん軸なのですが、 今作は青森という場所と放射性廃棄物にからむ想いを原動力にするばかりではなく、たとえば喜びの表現としての「らっせらー」にしても、あるいは、リンゴ・イカ・ニンニクというアイテムの選び方にしても、そのコネタを観客と舞台が共有するということで牽引するという側面が、とりわけ序盤には強く意味を持っているのです。そのある種の共犯関係を欠いてしまうことで、実は少々長い前半の「りんご王国」の物語が丸裸に観客にさらされると感じられるのです。当日パンフによれば福島や滋賀の言葉をベースにした「それっぽい言葉」で話されているというけれど、アタシは、むしろ、現実には原発も再処理施設も無いとしても、観客の多くと共有できるこの土地の言葉を使い、せめて青森と松本で共通に使えるアイテムであるリンゴを生かした方法があればな、と思うのです。

もちろんナベゲンでの上演の意味は現実の青森県につながっていることなのだけれど、放射性物質の半減期、男の孤独、途方もない時間、科学技術のある種の未来への丸投げ感という物語の軸を中心に据えてエッセンスとして描かれることがあってもいいのではないか、と思ってしまうアタシです。でも、描いた側にはきっと違う思いもあるだろうしなぁ。そこは難しいところ。

それでも、これは確かにしっかりとSFであり、まぎれもなく畑澤聖悟の物語。それを遠く離れた、なべげんの上演が(まだ)されたことのないこの場所で観られる、というのがたまらなく嬉しいアタシなのです。

どうしても会場として大きすぎるピカデリーホールに客席を特設で設定し、「狭く使う」のは手間がかかるけれど、静かに進む物語を丁寧にみせるためにはうまく機能しています。

男を演じた三井淳志は、翻弄されながらもフラットでありつづけるつくりで物語の中心に居続ける力。お世話するロボットを演じた入山有紗は愛らしい造型、曽根原史乃はしっかり物語を進めるけれど、もっと爆発力のある役も観てるだけに期待しちゃうあたしです。女医を演じたたみの過剰めな色気に眼福、姫を演じた小池美重や殿下を演じた椿宏尚は氷河期のなんかヤンキーめいた二人の作り方が唐突で楽しい。 女を演じた小池美重は、ナベゲンでの工藤由佳子の濃厚さとは違う形での魅力。

|

« 【芝居】「ホテル・ミラクル」feblabo | トップページ | 【芝居】「長井古種 日月」あやめ十八番 »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【芝居】「翔べ!原子力ロボむつ」タヌキ王国:

« 【芝居】「ホテル・ミラクル」feblabo | トップページ | 【芝居】「長井古種 日月」あやめ十八番 »