【芝居】「「少年は銃を抱く」MU
2015.3.28 17:00 [CoRich]
短編に強みを持つハセガワアユムの新作はがっつり長編。
1日まで。駅前劇場。135分。
伝説のアーティストが自宅ではない庭先で亡くなった家。「江口ハウス」と呼ばれてファンやいろんな人々がその家を訪れる。三幕構成。
この家の少年は祖父が兵役の時に盗んできた銃を借り、それを持つと勇気がでて心の平穏が得られると、友人たちにも貸し出している。学校の演劇部にでられない男、学校でいじめられたり浮いたりしてる生徒たちは確かにその力を確信している。この家の少年は恋人にも声をかけているが、まだ迷っている。「少年たち」
この家の父親は「江口ハウス」に人を呼ぶ日々。その弟は浮気の末、妻の放火で焼き出され息子ともどもこの家に身を寄せているが、銃の秘密を耳にして、心に秘めた好きな人を守ろうと考え始める。
この家の娘は家を出ていたが小説家の夢も同棲も破れ戻ってくる。銃を貸し出す。「家族たち」
江口ハウスに不登校の生徒たちが出入りしていることに気づき、近くの高校の職員会議を開き、江口ハウスの閉鎖を話し合う。が、教師の何人かは伝説のアーチストのファンで乗り気ではない。
「教師たち」
濃密につながる三部構成、総勢21人の大作。長編よりは短編のキレが持ち味の作家ですが、三部構成がうまく働いていて、短編のキレと狂気、全体で描かれるこの世界の奥行きの深さがよくバランスをしていると思うのです。濃密だし面白い。ある禁断の勇気の源を貰って前に進む人々。音楽でつながり、切実な今の自分の問題を解決できそうな「武器」があれば先に進める。ほんとに行使する気はないけれど。
理由があるから先に進めるという気持ちは切実だけれど、そのために火器を持つのだというのは、この国の今の雰囲気に重ねてしまうのは、ワタシの悪い癖。なぜか観ている最中にそんなことを考えてしまうのはリーダーたるものの危うさと脆さが似ていると感じてしまったのかもしれません。
正直に云えば、時間は少々長く、役者もやや過剰な人数ではあります。そこをクリアすれば2時間弱には抑えられそうには思います。ゆっくりと重層的に描くと云う魅力も捨てがたいのですが。 とはいえ、この人数の群像劇っぽい作り、もちろん物語を背負う役ばかりではない、という弱点がなくはないのですが、ある意味、ナイロン100℃がいけいけどんどんで上昇していった頃のあの熱気をなぜか思い出すアタシです。
この家の息子を演じた小沢道成はイノセントで臆病な表情の奥に秘めたものの強さと脆さを感じる造型に説得力。姉を演じた真嶋一歌は珍しい役だと思うのだけれど臆病でしかし弟を思う気持ちゆえの謝罪の言葉がいい。 従兄弟を演じた斉藤マッチュは少し意地の悪い、しかし好きな人を守りたいという気持ちゆえの暴走の悲しさ。ヒロインを演じた小園茉奈はホントに可愛らしくて、しかし結果的には男たちを惑わせる魅力。 情報の教師を演じた佐野功はスマートに見える表の顔と、盗撮したり生徒に手を出したりというクズな裏の顔の落差がちょっと珍しい。
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