【芝居】「ホテル・ミラクル」feblabo
2015.4.5 19:00 [CoRich]
歌舞伎町という劇場の場所に発想したラブホテルの物語を5人の作家と、ひとりの演出家。前説代わりのもう一本も足して。シアターミラクル、12日まで。
何もしないって言ったのに。はじめてなのに。前説代わりに「ホンバンの前に」(作・池田智哉)。
AV撮影、男優はどうにも勃たない。女は初出演だがその気は満々で、監督は夜の町にバイアグラを買いに出てしまった。緊張をほぐそうとするが
「慰めきれない夜の話」(作・西山聡)
女はなんかいらいらしてて、父親の小言で家を飛び出した。男は仕事がことごとく上手くいかず、男女はホテルの一室に。
「頭に尻をのせてくれ」(作・フジタタイセイ)
呑み会がおわって男はやっと女をホテルに連れ込むことに成功したが、既にもう朝だ。女はテレビのギリシャ戦に夢中で男の相手をしない。時間は残り少ない
「2014、暁のザッケローニ」(作・深谷晃成)
男を殺した女ふたり。ひとりはSM嬢、ひとりは眼鏡の女で恋人。鉢合わせて男は三人でホテルに入ることを提案した。女たちは互いの意思がわかってしまった。
「さよならを教えて」(作・河田唱子)
男は繰り返し若い女をホテルに誘い金を払い写真を撮って投稿誌に投稿する。女は声優になりたいといい貰った金はそのための貯金にするというが、男は声優よりも芸能界だと主張する。
「スーパーアニマル」(作・ハセガワアユム)
「ホンバン〜」はなるほど、うまくつくった前説演劇。気楽な気分での導入として機能します。
「〜夜の話」は幕開けらしくコミカル。性欲あふれる素人AV嬢と、ともかく勃たない男優のすれ違う会話はAV出演という非日常だから何かを大きく変えられるかもしれないという期待ゆえのがっつきゆえの。女はどこか豪快でがさつ、やけに重い人生背負ってるのに前向きというのがいい。演じた栗林真弓は 全体にズレ気味だけれど陽な雰囲気を造型する味わい。
「頭に尻を〜」は、タイトルがしめすルールに縛られる会話をともかく続ける、ワンアイディアの一点突破。その中で語られる物語でもうちょっと牽引力が欲しい。でも、このタイトルはやけに秀逸で、一度聞いたら忘れられない強烈なインパクト。実はラブホテルという設定でなくてもいろいろ応用が効きそうではあります。
「〜ザッケローニ」もすれ違う男女。朝までの飲み会からなんとか二人で抜け出してホテルの一室なのに、時間はどんどんすぎていって延長の料金を払うこともできない時間切れの焦る感じ。それでも時間切れぎりぎりになんとかゴールを決められそうな雰囲気は、サッカーの時間ギリギリのゴールな感じでハッピーエンド。コンドームをユニホームといってみたり、というベタな駄洒落のような言い換えで盛り上がれるというのは確かに恋人たちゆえ。客席も大きく笑いを取りますし、 全体の中では直接的にエッチな感じではあってそれはそれで嬉しいオヤジなあたしなのです。女を演じた土佐まりな、テレビを見続けるという設定がうまく機能して、客席のある一点を凝視してるゆえに目力の強さがより感じられるように思います。なんせ可愛らしい。
「さよなら〜」は女ふたりで不実な男を切り刻むサスペンス調。明らかに不倫なメガネ女と、男が贔屓にしていた風俗嬢の二面。血みどろのパーツなのだけれど、もう、完全に私たちのモノになったのだ、という終幕の安堵感が、理解しがたく、しかし確実に二人の想いが匂い立つように濃厚なのです。全体の中ではもっとも女優の露出が多く、まあこれも眼福なアタシです。石澤希代子の安定感、メガネ女を演じた小林唯のメガネ萌え直球な雰囲気もたのしい。
「〜アニマル」は、投稿写真というスタイルで女を撮影し、応援するような気持ち、女はどこか醒めていて貰った金を自分の将来に投資しているけれど、こんな雑誌でも載ったら嬉しいという本音も見え隠れ。女はさらに、男が余裕を見せてる風なのに、本当は恋をしてしまっていることも見抜くし、「有名になったらそれを応援していた男も嬉しい」ということすら見抜いていて。それはたとえば、小劇場の女優を追っかけてしまっているアタシのようないわゆる観劇おじさんのある一派を描いているようでもあります。男を演じた細身慎之介のある種の気持ち悪さと驚くべき記憶力な造型が印象的。女子高生を演じた川口雅子はさんざん男を翻弄して、しかしあっさりと去って行く姿がカッコイイ。
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