【芝居】「うさぎとシーラカンス。」SCARLET LABEL
2015.3.1 18:00 [CoRich]
3日まで駅前劇場。90分。
年上の立派な男から求婚されている女は電子書籍で小説を出している。古書店主の初老の男が片思いしていた女が一方的に預けて去ってしまった娘を、自分の子供のように育ててきた。女は年上の立派な男から求婚されていて、置き手紙をして家をでたものの、かわいがっていたウサギの手術の報を聞き、家に戻る。
古本屋の店主、その娘として育てられた女、女を娶ろうとする男の物語を外側の骨格にして、女が書く同話めいた小説はその相似形になっていて、水の中で出会ったシーラカンス、やってきた兎、結婚する相手の物語。
もう初老の域に達する父親代わりの男を慕い、抱いて欲しいとすら思うインモラル。 身体を欲しがらず、ずっとそばに居てくれる男。娶ろうとする男は立派ではあるけれど、 身体を欲しがるしという対比。 それはどうにもゲスくていけ好かないわかりやすさ。年下の娘が父親に恋してしまうファザコンに作家はもうひと味を加えます。それは父親代わりが片思いしていた女が置いていった一粒種で、子供が育って行くにつれ滲むようにあの女に似てくるという恋心。その嬉しさ、その苦悩。女の側にも男の人生を自分を育ててくれたために奪ってしまったというある種の負い目。さまざまな想いが交差する二人。
作家・葛木英の何を知ってる訳ではないけれど、どこかそういうファザコンぽさを持っているのではないかと、勝手に想像するアタシです。作家としての彼女の姿がみえるもう一つのシーン、書くことは解にたどり着くための過程、書かないと人生が進まない、という台詞がとても好きなのです。
この物語を受け取った演出・堀越涼はこの物語を傾くように、外連味を昭和歌謡という手を使って加えます。妙なテンポだったり、緩急が激しすぎたりする使い方で、静かに沈むような物語を意図的にかき混ぜているのは面白い。大泣きするシーンに、たいやきくんだったり、なんてのもわけわからなくて楽しい。
結婚式、バージンロード、父親から娘を男に渡す、というシーンをゆっくり。この背景をこの「普通の」結婚式に集約する終盤もいいシーンなのです。
娘を演じた秋山莉奈はずっと可愛らしく、しかし強い意志を秘めたヒロインをきっちり。父親を演じた伊藤ヨタロウは静かに暮らす日々、内に秘める気持ちのコントラスト。終幕の鼻唄もいい。パートの女を演じる傳田うにはあちこちに激しく揺れる物語のなかでずっとフラットで居続けるちから。ゲスい男を演じた加藤啓はほぼヒールの強さ。その妹を演じた大竹沙絵子もいけ好かない造型をきっちり。
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