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2015.03.27

【芝居】「はてしないものがたり」キシノカワモト

2015.3.21 18:30 [CoRich]

アタシは未見2005年のピチチ5上演作を上演。90分。22日まで王子小劇場。

男たち、一人の女性を囲み追い込むようにしてくる。女には惚れた男が居て告白するが、その男は女性に告白されたりするわけはないと言い出す「三人の開拓者」
終電を逃し自転車盗もうとする男たちに持ち主のロッカーが声をかける。そのうちの一人がファンだといいだす「嘘だと言ってよ、ハリー!」
百均のバイト、店長。店長より仕事ができるバイトはもう辞めて正社員で採用されるが、やけに長い研修が待っている。公園で殺された男が云うには「吉崎、かく語りき」
引っ越しバイトの男たちは休憩ばかりで仕事なんてしたくない。美女が通りかかれば目を奪われる。あれは実在するのか。「ほんとだよ」

一人の女優と、ほかは男性の俳優たちによる構成。モテなかったり金が無かったり、使えない社員とバイトだったり、輝いていたはずのパンクロッカーのくすぶりだったり。鬱々とした気持ちで暮らす日々だけれど、どこか中二的というか良くも悪くも幼くて、なんか部分的にはあたし自身を観ているよう。

「三人〜」はおそらくは職場の紅一点、すごくかわいいわけでもないけれど、みんなぼんやりとその女性に憧れているという前段。酔った勢いなのか、肩に触れただけとか、胸が強調されるようなバッグの斜めがけという些細なきっかけでそれこそ暴発するように女に迫る男たち。恋愛よりもセックスだとはっきり云いきってしまう切実さ、他人事ではありません。これっぽっちも恋愛の対象として見てない女との落差。後段ではその女が憧れる唯一の男が同じ職場に、となるけれど、非モテを拗らせすぎたあまりに、女が告白してくるわけなどない、という急展開は、やがて素人女性(つまり風俗嬢は居る、というのがやけにリアル)などいない国を作るという無茶な着地点に。この跳躍力と勢いは客席の爆笑を誘います。

「〜ハリー」は現行犯でつかまりそうな自転車泥棒をなんとか舌先三寸で逃げ切ろうという前半。時に会話をそらし、時に哀れを誘おうとしてなんとか逃れようという無茶さ。自転車が膝蹴りでまっぷたつに分かれてはじまる後半は、持ち主の男はかつてはかっこよかったのに、音楽で芽がでないまま、いい歳になってしまった鬱屈。自転車が女神のように生まれ変わってバイクに降臨するというのもなんかいい。

「吉崎〜」は、百均とか居酒屋とかあるいは明らかにブラックな弁当工場といった将来の希望が見いだしづらい職場、そこになじんでるバイトもいるけれど、優秀で仕事をたくさんしているバイトよりも、おそらくは使えない社員の方がたくさんもらってるという不条理ばかりの世界。がんばって働けば上をめざせる、というのは幻想なのだとあっさり描くのは身も蓋もない感じ。かと思えば正社員で採用されたのに3年の研修期間という搾取の現場。希望がもてない世界の中で、自分を肯定して生きていくのが、オナニーなのだという発想は中二的なんだけどなんか他人事じゃなく感じちゃうあたしもどうなんだ。

「ほんと〜」もまた、将来が見いだせなくて、労働なんてことにこれっぽちも興味がない男たち。もちろん非モテ、もちろん金もない。通りかかる美女で動きが止まり目が釘付けというのだけはみな共通していて、でもそこに見えてるように感じる美女なんてのは実は居ない、幻なんだという着地点も拗らせ方が楽しい。

紅一点・工藤さやは時にパワフル時に可愛らしく、時に怪しい外国人とさまざまな見え方が楽しい。特に一本め、ほどよく大人で、なんかやけに色っぽい。 モテなんか信じないと云いきる男を演じた松本D輔がなんか神々しく。

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