【芝居】「渦中の人」セロリの会
2015.3.1 14:00 [CoRich]
1日まで「劇」小劇場。110分。
民宿を切り盛りする妻は教師の夫はこの土地にも民宿のことにも興味がなく、鬱積した不満を爆発させた妻は離婚届を突きつける。 この島は盛り上がらない観光地だったが、宝くじの当選者が続けて出たことから観光客が増えている。 東京に行っていた夫の弟が突然ふらりと現れる。センスの良さで、パワースポットや開運グッズをからめたネットの宣伝を通して土地の人気を盛り上げていくが弟は何か後ろめたさがある。 同じ民宿で働く妻の姉は娘には島の男と結婚してほしいと願い島外の恋人と別れさせるが娘はあきらめきれない。民宿は今日も盛況で、彼のための事業資金を宝くじで当てたいと願う女や詐欺に遭い無一文となった崖っぷち女、あるいは整形をしてまで恋人を追ってきた女が泊まっている。最初は思いつきだった開運グッズもなぜか小さな当たりが続くようになってきた。
離島という場所、外から人は来るけれど、それを有効に生かせなくて、なんとか生きては居るけれど、経済的には苦しい日々。 夫はこの土地の小学校の教師なのに、この土地の伝説を15年も住んでいて知らないということが序盤の象徴です。妻の実家のあるこの土地に住んでいても、伝説も知らないし、妻の悩みも見えてないし、民宿だって手伝いもしない。妻から切り出された離婚を機に変わりたいと思う気持ちが渦巻きます。
旅行者の女たちもそれぞれの想い。男だったり現金だったりにすがりたいとおもってたり、半笑いだったりいっそ都市伝説信じちゃえだったり。でも、何かが当たれば嬉しいし、人が当たればワタシもと思ったり、というあたりまえの感情をことさらに強調せずに丁寧に描くのは、それぞれの人物の造型の深さに繋がります。
あるいは、近所の干物屋の女、「女の電源切っている、いれるタイミングを逃してて」なんて台詞は容赦ない。後半に居たり電源を切ってる理由も明かされるのも深み。どきどきしたくない、というのはワタシも心当たりがありがちだったりしますがそれはどうでもいいですね(笑)
あるいは母親と娘の確執というか。飛び立ちたい娘をつなぎ止めたい母親。言葉の端々、たとえば娘は老後の保険なのか、という娘の言葉を否定しない母親。娘はずっとこの島にいるとおもうとぞっとする。 出て行くなら母は死ぬと言い放つが、娘はここに居てもワタシは生きていたって死んだも同然なので同じだという。
中盤からは離婚を切り出した妻は実はもうこの世には居ないことが明確に語られます。朝食のシーンでそれを大声で、というのはどうかと思ったりもするけれど。幻覚がずっと見えていた夫だけれど、終盤に至り夫は妻の死を受け入れ、好きだということに向き合い、妻の幻が見えたって、幻だと自覚して生きていく、というのは前向きで素敵なのです。
干物屋の女を演じた遠藤友美賀、容赦ない台詞だけれど、がははと受け止める強さの造型。つなぎ止める母親を演じた辻川幸代は、理不尽を絵に描いたような存在きっちり。 パソコン弱い、という一人芝居はやややり過ぎな感じではあるけれど、そのあとの物語の深刻さに対してちょっと明るくしてる感じだと思ったりも。弟を演じた仲井真徹はほんとにかっこいいなぁ。終盤もいい。 連れてこられた旅行者を演じた天舞音さらは、終盤であっさり逃げるのが格好良く。 亡くなった妻を演じた勝平ともこはそれでも喜怒哀楽のコントラストが印象的。
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