【芝居】「ゲジゲジ」散歩道楽
2015.3.4 19:30 [CoRich]
17年の活動に終止符を打つ散歩道楽の最終公演。10日まで楽園。85分。
早朝の新聞販売店。朝刊が届くのを待つ眠れない男。理不尽に扱ってくる先輩には女の子を紹介されるが、馬鹿にされぞんざいに扱われる。理不尽に何かしてやりたい、という脳内の会議。立ち寄った女はあれこれあって酔っていて、でもそれからも時々訪れて。
女が去って行くという別れはあるものの、ことさらに別れを意識させるわけでもなく、最終公演だというのにびっくりするほど淡々と描きます。もっとも、作演の太田善也にしても、今回は出ていないけれど劇団から派生した川原万季が率いるドリームダンなど、これからもこのユニットの人々の多くが演劇のどこかで進んでいくのだから、一つのマイルストーンに過ぎないという意識のあらわれかもしれません。
眠れないゲジゲジ眉の男、夜と朝の狭間の静かな時間、新聞が届く前、空っぽの広い作業テーブルを見つめる男。そこに見えているのは葛藤だったり欲望だったりが別々の人格として現れ脳内会議を繰り広げます。中央に王女、グラマラスな女、セーラー服姿の初恋のあの娘、喧嘩っ早い男、冷静であり続ける男、へらへらと仲良くありたい男。自分の行動を決める男たちと、自分の性欲の出口としての二人の女。なんか 作家の脳内じゃないかと思うのにあけすけだし、脳内だし。たしかにこういう無茶な人物を中心において物語を描くというのは、自分の劇団でしかできないわけで、ああ、なるほどこれもまた正しい解散公演なのだなぁと思ったりします。
が、いつまでもそういうファンタジーは続かないのです。女は記者でシリアに向かうことになり、脳内の人々は刺され、消えていきます。それは決して悪いことではなくて、ファンタジーに浸っていてずっと寝ていなかった男が最後に大あくび、眠る、というのはファンタジーを終え、現実に向かい合っていく描写と読みました。「同志」で固められた劇団というある種のファンタジーを終えて、他の劇団への書き下ろしや演出など、仕事という現実いっぽんでやっていこうという決意。もっとも観ている最中はそういうい決意とか劇団とのリンクなんてことを感じて観ていたわけではなくて、書きあぐねて1週間経って、ああ、そいうか、と勝手に合点がいったのですが。
ああ、そうか、11年も観ていれば、勝手にアタシも作家に対して同志になった気になって、何を考えていそうか、ということが判っちゃった気になるのか、と思い至るのです。もっとも芝居をみて、たまには呑んだりもする、ぐらいの緩いつながりでそれはおこがましいのですが。
もう一つ、劇団で作るという強さ。この公演のあたり、川崎の少年の事件だったり、そのまえのシリアの事件だったり。「ひどいニュース」という台詞に代表される、社会に繋がる新聞読み(しんもんよみ)の新しい話題を台詞に入れられる、ということ。話題としては相当に微妙で芝居に組み込みづらいことだけれど、それをなんとか編み込みたいという決意も嬉しい。
主役を演じた上松コナンはついこの前の芝居ではサブキャラながら作演の雰囲気。今作ではがっちりメインをしっかりと背負います。その作演はヤクザっぽく怪しい新聞店の販売員(拡販員)というズルい役で、やりたい放題で、楽しい。初恋の娘を演じた鉄炮塚雅よは可愛らしくエッチで、色っぽい女を演じたヒルタ街はぶれない色気、酔って訪れる女を演じた珠乃、落ち着いている女王を演じた川原安紀子は久しぶりで嬉しく、あるいは45点の女という酷い役だけれど、あからさまに豹変する女を演じた竹原千恵のコントラスト、暴れん坊な脳内の男を演じたキムユスの暴れっぷり、理性的な男を演じた植木まなぶのキャラ芝居楽しく、理不尽な先輩を演じた椎名茸ノ介はヒールだけれど、垣間見の優しさのコントラストも印象的。へらへらしている脳内男を演じた安東桂吾、最近短パンとかパンツとかの役ばかり観てるきもするけれど、楽しく居ようとするという造型がいい。
- 2004.5.9「ふしあわせな昆虫」+「モヒカン」
- 2004.12.19「走れ恋人」
- 2005.4.16 「カトレア(秋冬)」
- 2005.9.4「レミゼ」
- 2006.5.16 「ニャ次郎の恋(散歩キャッツ)」
- 2006.6.30 「宇宙も終わる」散歩道楽+タテヨコ企画
- 2006.7.17「荻窪ベビイ」
- 2006.8.19「かりあげてみた」
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- 2007.1.7 「くらい」
- 2007.7.22「ドリームダン」散歩道楽プロデュース
- 2007.11.2 「西国分寺物語」
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- 2009.9.26「ありとあらゆる涙」ドリームダン・散歩道楽
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