【芝居】「再生ミセスフィクションズ」Mrs.fictions
2015.3.28 17:00 [CoRich]
短編のショーケース企画・15minutes madeの主宰団体が作りためてきた作品群をまとめて4本再演という企画。 30日までシアターミラクル。日曜午前中に追加公演が設定されました。
屑鉄のスクラップ工場で働く兄弟。女性型アンドロイドを拾ってきて密かに働かせてきたが、どうも最近調子が悪くて働く意欲が減退してかわりにお茶を飲むような普通の生活が好きで、おっちょこちょいでその笑顔の虜になっていて。
「ねじ式(未来篇)」(
1)
もう娘も大きくなっているが、六本木の交差点で妻に一目惚れしたバブルのあのころの記憶だけが強く残っていて、最近の記憶は覚束なくなってきていて。
「お父さんは若年性健忘症」(
1,
2,
3)
ホームレスの男が駅で電車を待っている。上京を知った元同級生の女が大きな荷物を抱えておいかけてくる。地元でずっと姿をみていたのに、卒業式で渡されたラブレターの返事を、男はまだしていなかった。
「東京へつれてって」(
1,
2)
夜、布団をしいて寝ている男たちだが、眠れない。知らない間に人が増えたり減ったりした怖い話を始める友達。
「まだ僕を寝かさない」(
1)
「ねじ式」はどこかこの4本の中ではもっとも古い一本。かつかつの生活をしている兄弟、一緒に暮らす妙齢の女性型アンドロイドと。働かせるために拾ってきたアンドロイドだったのに、働くことを放棄してるといってもいい状態になった彼女のことを抱えている余裕はないし、拾ってきたものだから直してもらうということもできないのだけれど、さりとて捨てたり壊したりということにどうしても踏み切れない兄弟。兄だって口では捨てなければと云ってるけれど、どうしてもその一歩が踏み出せない。ころころと笑い、すこしオッチョコチョイで可愛らしく、天真爛漫といってもいいような彼女だけれど、それは母親のようでもあるし妹のようでもあって、もうそれは家族、としかいえない感情が二人を支配するのです。唐突に配られたトランプのゲームにつきあっちゃう。抗うことのできない感覚はまさに家族のそれ。アンドロイドを演じた黒川深雪はほんとうに可愛らしくてその説得力。
「お父さん〜」 はこの半年の間にすでに2回も外部で再演されている人気作。記憶力のないアタシでもすっかり物語が頭に入って、それでも繰り返しみても楽しさを感じる一本。あのいかれた時代の空気がもしかしたらそういう人が居たるかもという説得力は現実に立脚したものだけれど、長く繰り返し上演できるかもしれない、という不思議なファンタジーに仕上がっています。何より岡野康弘が演じるバブルの亡霊に囚われながらしかし彼自身は幸せのただ中にある男の味わいはずば抜けていいのです。それにつきあう妻もあのときの幸せの残り香を楽しむかのようなすてきな一本なのです。
「東京〜」もつい最近の再演に続く上演。リアルにホームレス風だし、シンプルにどこかあか抜けないでやや莫迦っぽく大荷物を抱えたキャバ嬢という雰囲気になっていて、より上京という雰囲気が強くなっています。 確かに競泳水着・上野友之風味な物語で、演出が彼になっても本当に何の違和感もないのです。彼がとても好きだと当日パンフに引用した、初演の時の仕掛け、ラブレターの推敲っぽい文章はその幼さと、それを5年も繰り返していくことで小説家志望だった男の夢を破壊するほどには迫力がはったということの想いの強さを夢想して楽しくなってしまうアタシなのです。
「まだ僕を寝かさない」は原作から改訂したもののようでタイトルも少し変わっています。例によって記憶力がザルなアタシですが、きっと後半の別の男たちが現れたあたりを加えたのかなと思ったりもします。
不思議な味わいの一本で、何かの怖い話なのか、それとも男の頭のなかの走馬燈なのか。男たちがホモソーシャルよろしくきゃっきゃ騒ぎ馬鹿話しながらの夜中の情景。トークショーで彼ら自身が云うとおり、たしかにこれを続けていても大丈夫な年齢、みたいな賞味期限があって、そういう身ではこれも割とぎりぎりな感じではあります。
「いつの間にか増え、いつの間にか減り、またいつのまにか別の友達が」という友達のありよう、結婚したり事故に遭ったり音信不通になったりして疎遠になっていったかつての友の一人の夜、という雰囲気は深くて、ちょっとセンチメンタルに感じます。
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