【芝居】「This is 30」シンクロ少女
2015.1.25 15:00 [CoRich]
2月1日までスタジオ空洞。
三十代の男三人が集まって車に乗る。呼んだのは三男の会社員。子供を男手ひとつ、バイトしながら育てている長男しかもいつも金がない。次男は売れないままの作家。 長男の元妻の久々の墓参りで三男が告白したのは、結婚することになったことと、その相手が5年前次男と別れた女ということだった。盛り上がるのだか荒れるのだかわからない長男次男。高速を走る車、長男はいけるところまでいこうと無茶なことを言い出す。気が付くとそこは雪国、ノーマルタイやなのに。
無神経で金のない長男、売れない作家の次男なダメ兄二人とそこそこ普通な末っ子三人のロードムービー風味。 三男の結婚相手が次男のかつての恋人だったことで揺れ動くというよりはぎくしゃくする関係だけれど、なんだかんだいって仲のいい兄弟。 弟に金をせびる長男もたいがいだし、何者にもなれていないモラトリアム目一杯な次男も、酔ったイキオイで妊娠させた三男もまあ大人げない感じ。三十代は大人だと思っていたけれど、ちゃんとした生活をしている三男ですら、子供っぽくて。 幼く馬鹿っぽい男たちを愛おしく描き出す優しい視線は、まるで母親が子供たちをみているかのような視点。
コミカルさいっぱいのロードムービー部分に比べると、わりと静かな語り口の次男と恋人の二人語りのシーン、長男の妻が亡くなる直前のシーン。それぞれ数年前のことだけれど、物語のきっかけとなった女の立ち位置を示すと共に、単なる幼く馬鹿っぽい男たちというだけではなく、長男が経験してきた悲しさだったり、次男が経験してきた恋の終わりだったりと、それなりの年齢となった男たちが生きてきた時間の厚みをコンパクトに示すことで、人物に奥行きが生まれるのです。
タイトルに込められたのは、三十代になりはしたけれどということ。 序盤では小説を書くて姿勢として語られる「結末を決めずにいきあたりばったりにやってきたし、これからもきっとそうだ」というのはきっと作家自身がどこかで思ってる生き方の姿勢か。後半のロードムービーは「いけるところまでいこう」だけれど、それが見事に失敗していて。雪の中からの生還は、兄弟たちが 助け合い、ちゃんと前に進んでいけると感じさせるシーンなのです。
いわゆる色っぽいシーンを描くことはすっかりと減って、人生だったりと描くことが変わってきた作家ですが、男たちは実にいい味わいでそれを演じています。情けなくてダメ人間な長男を演じた泉政宏はしかし悲哀もきちんと描き出す奥行き。売れない作家な次男を演じた横手慎太郎はモテそうな雰囲気もいいし、それなのに恋人が見事に離れてしまうのも人生の一コマのよう。しっかりした三男を演じた 中田麦平は、生真面目な末っ子らしく巻き込まれ型な造型が愛らしい。 作家も兼ねる名嘉友美もきっちり大人の女、凛として美しい。
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