【芝居】「オールライト☆なぅ」肯定座
2015.1.25 18:00 [CoRich]
2月1日まで明石スタジオ。8曲をつめこんできっちり120分。
キャバレー・All Right 。毎日歌手と生バンドのショーが行われているが、あまり客は入らない。若い歌い手・歌姫目当てで通いつめる公務員、同じ女に入れあげ我がものにしようとするヤクザは常連のようだが、女はツレない。ホールの女は恋人を追いかけて上京して5年経つが先行きに希望がもてず明日故郷に戻ろうとしていて今日は閉店後に送別会をすることになっている。オーナーやマダムと一緒にこの店を立ち上げた男は、出勤途中で出会った占い師の言葉を真に受けて、同じく立ち上げメンバーの歌姫が今日この店に現れると期待しているが、恋仲だったオーナーとその一粒種を捨て出て行った因縁がある。 果たして歌姫は現れるが、マダムは決して許さない。故郷に戻ろうとする女にプレゼントされた一曲は、頑なだった同郷のホストの心を動かし、プロポーズに至る。若い歌姫に迫るヤクザから守ろうと公務員は立ち上がり、店全体も、店を辞めた歌姫もこの店を守ろうと立ち上がる。
明石スタジオという決して大きくない空間にきっちり建て込んだステージ付きの店。下手に入り口のドアと階段、上手にバーカウンターあれど、事務所ドアやトイレのあたりなど、どこか古さも否めない感じで奥行きを作ります。きっちりなのはセットだけではありません。マダムと出て行った女の確執、故郷に戻ろうとする女と軽口を叩く男、若い歌姫とヤクザや公務員の物語とこれでもかと物語を詰め込んだ上に、懐かしめのポップスやオリジナルとりまぜて8曲。それでも全体には125分程度に収めていて、濃密でしかし人情あふれる舞台を紡ぎます。
当日パンフでは「オペレッタ」というけれど、たしかに喜歌劇。音楽も洋楽中心の店という触れ込みだけれど、中身はどこまでも和風でべたべたに作り込んでいて実に見やすい感じ。確かに高円寺あたりにありそう、な感じなのもこの劇場の場所によくあっています。唄に関していえば、全ての役者がきっちり歌えるというわけではなくて歌姫という設定に対して少々ご愛敬ではありますが、物語をきっちり語りきれる力がうれしい。
あからさまに怪しい占い師の存在、必ずしも物語を転がしている感じではないのだけれど、少々無茶な「彼女が帰ってくる」ことに力業でねじ伏せて物語を進めるのは、面白い語り口。作家が出演する時の怪しい雰囲気にどこか似てるのも持ち味。あるいは空気を読まないんだか読めないんだかな男のハンパない異物感も物語をかき回して楽しく。
生方和代改め復帰第一作となる塩塚和代は和装のどさ廻り歌手、きっちり歌いきる確かな迫力はキャストの中でも圧倒的。マダムを演じた椿真由美はクールビューティ風きっちり、二人の掛け合いというよりはもはや口喧嘩な場面は圧巻の迫力。故郷に戻る女を演じた菊池美里(アウトデラックス出演嬉しいけれど、テレビはどうしてこうなんだ)は珍しくヒロイックにハッピーエンドがうれしいし、前半の丁々発止も持ち味で楽しい。ヤクザを演じた佐瀬弘幸はやけに説得力がある迫力、片言も板についています。どさ廻り歌手のマネージャを演じたちゅうりはおとぼけな口調がちょっといい。オーナーを演じた安東桂吾はクールに見えてちょっとキレるところがいい。立ち上げの店員を演じた藤崎卓也は、軽快な語り口で物語を転がしますが、物真似など濃くなりすぎるちょっと危ういバランス。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「ガラクタ」MCR(2024.12.07)
- 【芝居】「シハイスミレ」Q+(2024.12.07)
- 【芝居】「地獄八景(じごくばっけい)」おのまさしあたあ(2024.11.24)
- 【芝居】「ビッグ虚無」コンプソンズ(2024.11.24)
- 【芝居】「おまえの血は汚れているか」鵺的(2024.11.23)
コメント