2015.2.7 14:00
[CoRich]
11日まで駅前劇場。125分。
女性が亡くなり、演劇関係の雑誌が散乱する部屋にあった公演パンフレットには亡くなった女性が載っていたのをみつけた刑事は関係者への聞き込みを始める。
清水邦夫「女優」の制作発表が行われる。元アイドルの舞台デビュー作であり、表舞台には出てこなかった元朝ドラ女優の復帰作は新進気鋭の若手演出家を演出に迎えて稽古がはじまったが、期待の朝ドラ女優は台詞も出てこず稽古はいっこうに進まず、共演者にも不満がたまっている。年上の女優たちは若い演出家の云うことを聞かず、稽古場の雰囲気はどんどんわるくなる。若い女優の陰口が知られていしまうに至り、稽古場の雰囲気は最悪になり、さらには朝ドラ女優はもう芝居を続けることができず初日二週間前に至り稽古場を逃げ出してしまう。マネージャーで元女優の女が代役に立ち、稽古は順調に進むようになる。
作演・高羽彩が去年演出したフローズンビーチ(未見)がどうしてもリンクして感じられてしまいます。他にも商業系の仕事をしつつある彼女だから、この一本だけということはないけれど、女優四人の商業演劇というフォーマットゆえか。
それをそのままということはないと思うけれど、小劇場とは違う行動原理で動く現場のことだったり、承認欲求の固まりのような女優という生き物、という枠組みはそこから思いついたのかなと思ったりもします。それぞれの我が侭だったり、プロダクションの力関係だったり、チケットを売り切るということだったり。
アイドルの舞台デビューとか朝ドラ女優久々の復帰とか、評判のキャスティングに若い演出家という現場。評価されたこと、その価値がどんどん変化していくことは、自覚はしているのだろうけれど、そういう強いプレッシャーの中でも女優を続けていく怨念めいた想いは下敷きとなる引用作「楽屋」にもつながります。
私たちからは正直遠い女優で承認欲求を描くのみならず、操作するコミカルな若い刑事もまた、SNSの「いいね」だったり、商品レビューのYouTuberという、わたしたちのずっと近くに承認欲求を描くのは、冷静な視線。もっとも、物語全体の仕掛けの中では少々とってつけたようになってしまうのはご愛敬。
舞台はその外側にさらに、この物語をつくるスタッフや演出家自身も登場させて、さらに箱庭のごとく枠組みの中に閉じこめる意図はわからないけれど、虚構を積み重ねていく感じか。
正直にいえば、代役として立ったマネージャーの芝居がしっかり迫力あるものになっているのに、戻ってきた朝ドラ女優が演じた鬼気迫る迫力とが同じような迫力になってしまうのが惜しいといえば惜しい。戻ってくることに説得力を持たせるだけのジャンプアップする差がほしいのです。
若い演出家を演じた神戸アキコのコミカルさと、荒れる稽古場を是正できない若手ゆえの悲哀めいた感じが実にいいバランスで強く印象に残ります。微妙な立ち位置ながらしがみついてでもこの世界に生きていく女優を演じた二人、千賀由紀子、異儀田夏葉はどこか拗ねたような感じだったり我が侭だったりと、貫禄十分な女優の姿。
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