【芝居】「午前5時、立岩展望台にて」北川企画
2015.2.21 15:00 [CoRich]
城崎でのレジデンス制作と公演、大阪の公演を経て東京・小劇場「楽園」での公演は22日まで。100分。
その男は子供の頃から勉強も出来たし頭も回っていわば神童と呼ばれていた。周りの友人たちを見下すような態度をとるうちに、友達はいなくなり勉強に打ち込んで進学校に進む。秀才達に囲まれて成績は落ち、喫煙の謹慎をうけたりするうちに更に成績は落ち込んでしまい、友人たちからも見下されると感じたが、友人の一人の励ましでなんとか東京の大学に入学を果たす。再び勉強しなくなった男は学生劇団の門を叩き、気の合う友人も出来る。高校時代の友人の自殺をきっかけに大学を中退し、仲間と劇団を旗揚げし、同じ頃にバイト先に恋人も出来るが。 ヘルマン・ヘッセ「車輪の下」(wikipedia)を原作にとり、 周囲を見下していたために友人をなくし、やがて勉強で落ちこぼれていくなかで「独りになること」への強い恐怖心。それは最高学府に通うようになってもかわらず、しかし劇団を続けてきた友人だったり恋人が離れていくということの恐怖は変わらないままに。終盤は正解のない鬱々とした袋小路のなかで、前に進もうともがく作家自身のかっこわるい姿をそのままさらけ出すよう。 正直に云えば、序盤を除けば原作とはほとんど違う話になってる気もしますが、 芝居を作ることだったり、文章を書くことだったりの余裕とか地頭の良さを感じさせる作家で、悩むことないじゃんと思ったりもするけれど、彼自身にとっては切実なことをさらけだす、というだけのことで描くだけではなく、原作に重ね合わせるというギミックと前半のコミカルで軽い調子のおかげでだいぶ見やすくなっていると感じるのです。
やたらに表彰されたりトランプが無いから作ろうということだったりという、記号になっているように感じる子供のころと、上京してからのある種のリアルな描き方との差の違いが面白い。たとえば年老いた母との静かで短い時間だったり、退学届けを出してきて芝居を続けていこうと友人と話すシーンの細やかな描写。
とりわけ、
バイト先の女性への好意を見せるのに踏み出せない一歩を女性がぐいと引っ張っぱり恋人となり、いくばくかの時間を経て、別れ話、しかも若いのにセックスが無くなってしまったから、という静かな会話の生々しくてしかし、なんかとてもいい時間を過ごした二人というシーンが好きです。
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