【芝居】「ブリザード・ミュージック」キャラメルボックス
2014.12/21 18:00 [CoRich]
キャラメルボックスの人気作、主演してきた西川浩幸が再び演じるのも注目の120分。神戸のあと25日まで、サンシャイン劇場。観たことはあるはずなのですが、また忘れてるアタシです。
祖父はクリスマスの時期、勝手に劇場を一週間借りて演劇を上演すると言い出す。経験は無いが、学生の頃に上演できなかった戯曲があるという。しかもヒロインはずぶの素人の看護師に決まっているという。オーディションに集まった5人の俳優たちはそのままの上演は無理だと言い出し、70年前、その戯曲を手に入れたいきさつを上演することになり、祖父の家族たちを巻き込みながら、一週間後の上演に向けて準備が始まる。
同時上演の新作と同じ、 存在しないともいわれる 宮沢賢治「ペンネンノルデの伝記」(青空文庫)だが存在した、という出発点。それが賢治の意志とは別に東京の学生の手に渡り、上演は叶わなかったけれど70年の時を経て上演されようという物語。 演劇部とか役者というだけではなく、キャラメルの芝居にしては珍しく、物語の枠組みには、小劇場、宝塚、アクション、児童劇、大学生のサークルなどいくかのパターンで役者というものの生き方を自問自答するようなシーンが組み込まれていて、作家の演劇観が垣間見えるよう。
まだ何者にもなっていないころの宮沢賢治、いちおう書いたけれど発表を躊躇する気持ち。こっそりとはいえ読んでしまった人々の賞賛があっても、その気持ちは揺るがないという臆病。正直にいえば、上演できなかったこと、それから70年後という二つの時点を結ぶ時間が積み重ねたものに対して少々共感しづらいというか、端折り過ぎでは無いかと思ったりもしますが、それはたとえば役者というものへの想いを語るシーンとの上演時間の配分の問題なので、その危うさこそが、若い頃の作家の荒削りさを残すようでもあるのです。
正直、祖父を演じた西川浩幸はセリフに不安がないと云えば嘘になります。それでも、ジジイという役が助けになったか、大量の、しかも出突っ張りの主役という存在の説得力。 恋した相手の女を演じた渡邊安理は美しく清楚と、今時だけれど実直な女の子、という二面が楽しい。少々お調子者で明るい母を演じた坂口理恵、あるいはオーディションに来た二人の役者を演じた畑中智行、三浦剛などぞれぞれの役者としての余裕ゆえの遊びが楽しい。ボーイッシュな役ばかりが不満だという女優を演じた実川貴美子は、キャラメルでの今までの役が台詞に出てきたりする楽しさ。
芝居ゆえの演出、たとえば匂いだったり水だったりというのは生ゆえの楽しさ。今作はラストシーンで風を吹き抜けさせる、という演出。サンシャイン劇場という規模ですからもちろん全ての席で成立させられるわけではありませんが、コンパクトにみえるサーキュレータで通路やや後ろの席のアタシにもちゃんと風が吹き抜けていったというのは気持ちいい。こういうちょっとした工夫が芝居を見た充実感に繋がるんだよなぁと思ったりもします。
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