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2014.12.11

【芝居】「バイセコ」チャリT企画

2014.12.6 14:30 [CoRich]

座高円寺、7日まで。85分。

駅前。署名を訴える人、相棒がこないギター弾き、待ち合わせ相手がこない人、駅前は自転車で溢れていく。

えらく高い壁のある場所、駅前の雑踏の風景を点描しつつ、待ち合わせ相手が同じ場所に行るはずなのにパラレルワールドのように会えなかったり、幹事なのにサークルの人々がこなかったり。そのうち、壁の向こう側から乗り越えてこようとする男が居るのにほとんどの人々は気付かなかったり、雑踏の中でお茶の間よろしくリモコンが動かないと騒いでる家族が現れたり、何かからこっそり避難しようとしている親子だったり。冬の風景のはずなのに夏の出で立ちで生き遅れの姉を男に会わせようと画策する妹夫婦だったり。小さな断片、不条理だったりコントだったりを盛りだくさんに。

駅前の風景をベースにしているけれど、それ以外の風景を同じ場所に突然重ね合わせて描いていて、ものがたり、という読み方をしようとすると正直とまどいます。人々のさまざまな生活の風景が広がる場所だけれど、駅前に人々が放置していく自転車は、やがて舞台全体に広がり、人々の生活の場所がなくなっていく感じ。気にせず毎日を暮らしているとやがてがんじがらめで身動きがとれなくなるという感じで終幕を迎え、安倍総理の演説の声を背景に、喪服姿の人々がずらりと並んで横切る不気味さはチャリTっぽいといえばそれらしい。もう、既にそうなっているという雰囲気。

断片の物語はそれぞれ時に不条理だったりコントっぽかったりとバラエティに溢れてちょっと面白いものも混じっています。雰囲気で舞台を構成するということなのだとは理解しつつも、作家の力ならば、そして選挙直前というタイミングならば、放送ではやりづらくても芝居なら、座・高円寺という劇作家協会のお膝元ならばできる何かがあったのではないかとも思うのです。そういう意味で、時代のひとつの気分は描写しつつも、全体で何かを描いているという感じにならないのは少々残念に感じたりもするのです。

リモコンが動かないと会話をする家族、それが向けられるのは署名をしている女の子なのだけれど、ボタンを押してもDVDが動かない、女の子が何か反応すると動いた反応したり、修理しようと背中のなにかを抜くともう動かなくなって、という一連の流れはちょっと面白い。それでも、全体の文脈の中での意味を無理矢理読み解こうとしちゃうアタシですが、判断することをやめちゃった、ということぐらいしか思いつかず。もうちょっと何かありそうだと勘ぐりつつ。

あるいは行き遅れた姉に男性を紹介しようと画策する妹夫婦、姉はアイドルが居ればいきていけると嘯き気乗り薄だけれど、それがイケメンとなれば乗り気、でも紹介したかったのはイケメンだったかなんてSF風味も楽しい。レモンを持てばというアイドル雑誌の表紙というネタは若い人にはどれだけわかるんだろうとか。そういう表層の中に、たった一言、妹宅に居候している姉が「親の面倒を私ひとりで最後までみたのにね」とさらりと流したりというのは鋭い切っ先なのです。姉を演じたザンヨウコのツンデレ、ちょっと浮いて生活している感じだけれどイケメンならがっつく感じが楽しい。妹を演じた異儀田夏葉はきっちり社会の雰囲気とか同調圧力に組み込まれている造型で巧い。

彼氏を戦場に送りたくない女子を演じた前園あかりは、ことさらに目立つということはないけれど、このフラットさでずっと舞台に居続けていても目が離せない。他の芝居に目を奪われていても、気がつけばそこにいるという安心感さえ。

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