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2014.12.15

【芝居】「PRESS」JACROW

2014.12.7 19:00 [CoRich] サンモールスタジオ 8日まで。100分。

妻を亡くして半年、娘と同居している男は新たな恋人を家に招いて一緒に暮らしはじめるが、結婚している妹は面白くない。
ある日、娘が高校で友達を刺してしまう。学校でのいじめが原因かという推測が主流の中、一つの週刊誌だけが家族の問題を焦点に取材を始める。母親を亡くし父親が家に連れてきたのはホステスだということをつきとめ、店にも家にも取材を続ける。学校側は責任の軽減をねらう。妹の夫は自分の収入が減るのを恐れて、広告を出している週刊誌に圧力をかける。

マスコミと加害者の家族、容赦ない取材とそれを避けるためのあれこれを主軸に据え、丁寧に物語を積み上げます。 この一点を中心に、家族とか恋人とか大人の理由とか、重層的だけれど、ことさらに範囲を広げずに描いた物語は成功しているといえます。

いわゆるマスゴミ的な追い込む取材。その記者がその方向を突き進むのは私憤ゆえ。記者の恋人が取材を止めさせようとしたのは、結婚をうまく進めたいから。ホステスの女がなんとか我慢してきたこの異常事態から怒り出すのは、名前を間違えて呼ぶからだけど、電話に出ないのはある種の恋愛テクだから。それぞれの人物にそれぞれの理由があって、それは他人には見えないけれど、それぞれきちんと筋が通っていて。決して誉められた人々ばかりじゃないけれど、腑に落ちる感覚が、物語も登場人物たちの隅々まで行き渡る安心感。

LINEが登場するような イマドキの話としては、マスコミと当事者だけでは物足りなくて、その外側にネットで可視化されるもう一つのクラスタが存在するべき、というのはアタシの友人の言葉です。云われて気付くけれど、ネットの人々は顔がみえないので物語として描きづらいということはあるかもしれません。もっとも、今の登場人物たちの裏の顔、という描き方はできそうにもおもいます。

父親を演じた谷仲恵輔はいい味わい。序盤の晴れがましい感じから終盤の酒におぼれるところにいたるまで、一人の人物が変化していく様に違和感を感じないのがたいしたもの。あるいは記者を演じた堀奈津美、なかなかここまで猪突猛進、影のある役は珍しい。序盤の後輩キャラの芝居が可愛らしくほんとに好きなあたしです。妹の夫を演じた根津茂尚は穏やかな大人、守りたい物があるゆえの狡さを丁寧に。ホステスを演じた堤千穂は可愛らしく、そして計算高く。どうしてここが恋愛関係になるんだ、というのはオジサン観客のやっかみですが(笑)。

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