【芝居】「さらば! 原子力ロボむつ ~愛・戦士編~」渡辺源四郎商店
2014.11.29 19:30 [CoRich]
2012年5月初演の物語を文字通りパワーアップ改訂再演。 95分。30日までにしすがも創造舎。
10万年の間危険性が消えない「やばちもの」が処理できるようになるまでの中間貯蔵施設を誘致した町長はその行く末を見届けるといってコールドスリープに。しかし「やばちもの」は増え続け、しかしそれは千年経っても解決できずという枠組み。コールドスリープを繰り返しても何も解決できず、未来へ丸投げし、それでも環境は激変し、人類は消え、新たな別の生物が現れ、機械さえも朽ち果ててしまうほどの途方もない時間が必要なもの、という物語の骨子は初演のままに。
物語の上では、過去に置いてきた女というセンチメンタルな存在は薄くなり、代わりに強められたのは東京に対する強い怒りだと感じます。アズマシウムを手に入れ唯一の核保有国として独立を果たした青森、東京を焦土として、東京モノたちをとらえ奴隷にするという戯画的な描き方。「やばちもの」の存在はここを豊かな国にしたかもしれないけれど、騙されてここに置くことになったのだ、という地方のメッセージはより強くストレートに感じます。
人類の役に立ちたいというアトムや「むつ」の想いと裏腹に科学技術は「ある時は正義の味方、ある時は悪の手先」にもなるという両刃の剣というメッセージは今バージョンで加わった高校生たち、つまり当日パンフにある「丸投げされた世代」に対するメッセージという意味では、作家・畑澤聖悟の、生徒を見つめる教師としてのまなざしを見るようです。
「もしイタ」システムを手に入れ、コロスの役割を担わせることで、群衆の存在をきちんと描き出すようになったのは新しい効果。唄をいくつか入れるのも、この人数だと美しく愉しい。
初演では主役の男を演じた山田百次は今作では、東京に対する強い怒りを背負う新たな役を作り出しています。全員ジャージという出で立ちの中で、とりわけヤンキー感溢れる造型は、東京からみた優しさではなく、力強くしぶとく生き、怒りを体現していて印象的です。 新たに10万年を生きる男を演じた三上陽永は軽やかさよりは真面目さが前に立つ印象で、誘致したものをしっかりと見届ける真摯さ。初演に続いてロボットを演じた三上晴佳・音喜多咲子は舞台が広くなった分速く動く必要があるために正直ちょこまか動く可愛らしさはスポイルされている感もありますが、声のユニゾンの美しさ、ちょっとした仕草の可愛らしさは変わらず、いいキャラクタだなと思うのです。
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