【芝居】「山笑う」僕たちが好きだった川村紗也
2014.12.20 14:00 [CoRich]
川村紗也のユニット、旗揚げは小松台東の松本哲也の作演による宮崎弁会話劇を100分。24日まで新宿眼科画廊地下。
母が亡くなり、恋人をつれて数年ぶりに地元・宮崎を訪れた女。向こうの部屋では通夜振る舞いが行われているが、紹介されていない恋人を連れてきた妹とまず話をつけたいと兄は二人に控え室で待つように云う。 かつて、兄は子供ができたために突然家をでてしまい、実家は母親と妹の二人だけで暮らしていた。その日々のつらさゆえ東京にでてからは妹はほとんど地元に戻らなくなっていた。
恋人を連れて地元に戻った妹、田舎ゆえにそれをそのまま親戚の前に出すわけにいかず控え室という場所。久しぶりだからか、恋人をあらかじめ紹介しなかったからか、ぎこちなく流れる時間だけれど、ちょっとうざったいぐらい酔っぱらっているおじさんがあれこれ云うのが徐々に氷を溶かしていく感じ。
濃密になりがちなコミュニティの中で当事者じゃなくてちょっと離れた距離感ゆえの切り込みという役割を設定したのは巧い。ミニマムな人数と空間できっちり作り上げる筋肉質なつくりも見やすくていいのです。なかなか地元や実家に戻りたくなくて距離ができてしまった妹、それでも恋人を連れていきたいと思ったのは亡くなった母親にも兄にも兄紹介したいという気持ち。いっぽうで嬉しいけれどぶっきらぼうになってしまう兄なんていう造型も説得力があります。
アタシが座ったのは入り口から一番遠い側の隅、茶器とポットの目の前。女優たちが目の前で私にお茶を入れてくれると錯覚できる、という意味でも全体の距離感という点でもベストポジションでした。
帰ってきた娘を演じた川村紗也は可愛らしさに頼らず静かに会話をするのはあれれと思うぐらいに新鮮で、女優としての確かな力が大人の階段を昇り始めた感じがします。兄の幼なじみを演じた山田百次のデフォルメ強めな酔っぱらいも楽しいけれど、彼がいる故か、弘前劇場のいくつかの芝居を思い出すのは不思議な感覚です。恋人を演じた夏目慎也は開場中から舞台の上に一人居るのだけれど、それが不思議と飽きない。兄嫁を演じた荻野友里、さすが青年団、安定という点では圧倒的。中学二年生の息子を演じた吉田電話は飛道具的ではあるけれど、自意識の芽生えを持て余すような雰囲気はよく似合っています。作演を兼ね兄を演じた松本哲也は妹に対する気持ちゆえに怒る、そこから許すように緩やかに変化していく優しい雰囲気がいいのです。
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