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2014.12.21

【芝居】「運命の女」味わい堂々

2014.12.14 15:00 [CoRich]

14日まで空洞。90分。

一年居座られていた幼なじみの腐れ縁の女を殺してしまった、と電話をする。部屋を散らかし放題、本当に何もしない。高校の時だってそうだ、別の友達と仲良くすることをじゃましようとするし、大学の時の彼氏はデリヘルとしてヤってたし。また、一年前に唐突に目の前に現れるし。 でも、唯一の友達だと思っていて、決別することもできなかった。

ネタバレ。

散らかし放題で会いたくない節目節目に出会ってしまうという腐れ縁。勝手気まま傍若無人に振る舞い何もしないその女が家に転がり込んできた一年前なのだけれど、終盤に至りその女は一年前に事故に遭い、家主である医者の目の前で死んでいることが明かされます。嫌だと思っていたはずなのに、その喪失感ゆえに仕事も辞め引きこもっている状態で、何もしないままにこの一年を生きてきたのは、その家主の女。同居していると思いこんでいたのは、自分の中に芽生えた別人格だったか、あるいは亡霊のように見えているのか。一年を迎えて、なんとか元の生活に戻ろうという自分のバネが「殺す」という結末か。

傍若無人女が自覚的にやっていたのかは明確には語られないけれど、高校の時に危ないアルバイトの友達を遠ざけようとしたり、大学の時のダメ人間な彼氏をデリヘルの偶然がきっかけとはいえ寝取ることになっているのは、結果としては女の人生の節目で彼女を傍若無人女が守っていたことになるエピソードの配置がどこか優しい。もっとも、人のもの何でもほしくなってしまうだけ、という感じがしないでもないのですが。

女の話を聞いている男の職業を巧妙に隠しているのは巧いと思いつつも、CoRichの紹介文で「刑事」としてるのはミスリードで、役名でつじつまを合わせようとしてるのはまあご愛敬。この男、友達なんてものはつくらない、人との距離を常に保とうと生きてきたというのだけれど、終幕に至り友達を作るきっかけはどういうものかを訊ねたりしてちょっと雲行きが変わります。これも明確には語られないけれど女の家で食事をして帰ろうというこの瞬間に新たな出会いの予感を感じるような不思議な風合いがあります。演じた田中★は、どこかフィクションめいたものを感じさせるデフォルメな造型は両刃の剣だけれど、物語の雰囲気にはあっています。

食事を作ってもらうばかりか電子レンジすら使わない、ベッドから立ち上がることだってしたくないという徹底的にぐうたらずぼらな女、人のものは何でもほしい傍若無人という造型で演じた宮本奈津美、徹底したコミカルで笑いを取りつつ、行動の端々にイラつく要素を詰め込んでいてちょっとすごい。それにイラつきながらもどこまでもつき合う浅野千鶴はしっかりものでニュートラルな造型だけれど真実が明かされる終盤に至り、その深い闇というか異常が見えてくるのが見事。

高校の友達を演じた加賀凪は幼くみえてJKリフレからもう一歩踏み込むイマドキっぽさの自覚の危うさ。大学時代のダメ彼氏を演じた横手慎太郎は目の前の抱けそうな女なら抱いちゃうダメっぷりがそれができるかどうかは別にして親近感なアタシです。


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