【芝居】「狂犬百景」MU
2014.11.24 17:30 [CoRich]
町に溢れた狂犬を背景に緩やかにつながる四つの物語。休憩20分を含む180分。24日までVacant。
コンビニ、別れた女が動物愛護団体で、寄付を迫る、妹はコミュ障で。
街には狂犬が溢れてる、あれは飼っていた犬だ。ごめんなさい、ごめんなさい。「犬を拾いに」 (ハセガワアユム)
会議、食玩に食い物にされ。部長はふしだらで、でも専務は辞めさせない。技術部は快く思ってない。
バツイチ子持ちと取ってきた仕事はキャラクタ契約、開発の女傑だって、でも妻のためか、怪しまれないためか、狂犬の中に走って行く。「部長は荒野を目指す」 (米内山陽子&ハセガワアユム)
漫画家、アシや友人、編集はは犬を殺して廻ってて、それを写真や動画にとって愉しんでる。ライターと伴に来たカメラマンは許せない気持ち。自分たちはいつから狂ってるんだろう。「漫画の世界」(ハセガワアユム)
愛護センター、譲渡会。狂犬になる前に捨てる。街の人々が集まってくる。地下に人が閉じ込められてたりるする。「賛美歌」(ハセガワアユム)
「犬を〜」は コンビニのアルバイトたちの会話、コンビニ店長を訊ね寄付を迫る元の恋人、コミュ障気味の妹たちのかみ合うようなかみ合わないような会話。フリーター女にほのかに恋心を寄せる大学生はあっさり気持ち悪いと切り捨てられ、元恋人の二人は迫り来る狂犬に二人が飼っていた犬への懺悔の気持ちを高ぶらせるという具合に見事にバラバラな点描。会話のそれぞれのキレを楽しむのが吉か。
「部長は〜」はともかく不倫まみれだけれどバリバリ働く営業部長、関係した女たちもそれぞれの仕事に燃えて菓子の味と、食玩キャラクタのライセンスという成果に誇りを持っていてどちらをとるのか、どちらも取らないのかみたいなくんずほぐれつ。男が決断を放り出したかのように物語はあっさりうっちゃられ、破れかぶれに狂犬の中に走り出す部長のシュールさは一回りしてパンクですらあります。
「漫画〜」犬を殺し回ることが愉しくなっちゃってる漫画家とアシスタント、編集たち。狂犬だからというわけではなく、悪くても愉しいことだから狩るというわかりやすく狂っている人々。訪れた「普通の」人々がまったく歯止めにならないのは恐怖だけれど、それが「賛美歌」に巧く効いています。
「賛美歌」は狂犬が溢れてもかろうじて機能している動物愛護センターだけれど狂犬になる前に捨てるという風潮が機能不全になる直前に。それでも心配こそすれパニックにはなっていない職員たち、それぞれの物語の人々が集まってくる終幕の雰囲気。犬を殺すような酷い人々だから監禁してもいいのだ、という正義からスタートした狂気が歯止めなく暴走していててその狂気の上で「譲渡会」の平和な風景があるというコントラスト。
過去への懺悔、不倫まみれ、動物への虐待、人間への虐待というグラデーションで描かれる人々の風景。狂犬に溢れた世界はまあ、つまりゾンビが溢れた風景として描かれているような雰囲気ではあるのだけれど、それぞれの断片の狂い具合はハセガワアユム節全開だけれど、正直に言えば、四つも続けてみると全体の長さもあいまって狂気のインフレのような感もあって、きゅっと締まった会話の切れ味で勝負する作家としては少々勿体ない仕上がりという気がしないでもありません。
当日パンフのあらすじや登場人物の丁寧な紹介は、どこかライナーノートのよう。物語や演出だけにとどまらず、公演というパッケージに添えられた、グリーティングカードのようで、この作家の魅力のひとつなのです。
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