【芝居】「First Contact」ハム・トンクス
2014.12.13 14:00 [CoRich]
14日までシアター711。120分。2002年に上演した「こっぱみじん」「たんぽぽは眠らない」の前日譚となる人形劇団と土浦の人々を巡る物語の前日譚。
複数チームに別れて地方周りをする人形劇団。座長が受けた仕事は、土浦・河童祭りにあわせて久々のホール公演。公演4日前、別の仕事の帰途、下見に立ち寄る座長と数人の劇団員たちだが、それぞれの公演の予定が入っており、大ホール向けの演目のために必要な人数に大幅に足りないことが判明する。座長は人数が足りないことを主催者に云わず、幼稚園まわり向けに使っている小規模な短編を複数組み合わせてなんとか乗り切ろうとする。 いっぽう同じ大ホールでは、同じ日にナツメロ当て振り大会も予定されている。人形劇を呼んだ主催者は当て振り大会の参加者の後輩で、抗争関係にある。宮本勝行といえば、バイオレンス風味溢れる、しかも茨城弁のどこか喧嘩をしているような悪意のあるような会話の芝居が圧巻。2002年の二本、当時のアタシ、本気なのか嘘なのか、悪意なのか好意なのかがわかりづらい人物造型に戸惑って観ていた印象があります。今作もその雰囲気はあるけれど、東京の人形劇団の男たち対地元のヤンキー女たち、というあからさまにわかりやすい構造にしたのが巧く機能していて、数段判りやすく、気楽にみられる印象が強くなっています。 前の二本が東京の人形劇団と地元の人々のすれ違いというかギャップの物語でしたから(まあ、記憶は例によってないんですが)そのファーストコンタクトを描きます。和気藹々な人なつっこさと冷酷で喧嘩腰のような会話がめまぐるしく入れ替わる会話は健在です。
テレビにも人形操作で出ていたり、何チームにもわかれて地方を回るそれなりに大きな人形劇団。熱い思いはあるけれど、どう考えても無駄な上下関係をめぐる会話を重ねつつ、目前に迫った上演に問題があることが判明する前半。 それを正直に言わず、別演目をごまかしてなんとか仕事を守ろうとする座長。
後半は 地元の女たち、小学校教諭、ラーメン屋夫婦、理髪店らしい後輩。ノリつっこみしてみたり、馬鹿にしてみたりの和気藹々なまったりに見えるけれど、人形劇団との契約を前に後輩と先輩二人は大人になってるのに世代交代を前に抗争を繰り広げるヤンキーな関係だということがあきらかになっていきます。訛りながらも、凄んで見せたりということに巻き込まれそうになりながらも何とか距離を保っていた人形劇団がここに至り演目をごまかそうとしていたことが明らかになる終盤が圧巻。凄んでみせる女たちを目の前に、男たちがまさに縮みあがる関係が秀逸で、それを他人事として眺める観客には気楽で楽しい一本なのです。
小林さやか、佐藤あかりという青年座・俳優座の役者をもってして、ヤンキーを演じさせる凄さ。圧巻の凄みのある空間を創り出しています。後輩を演じた大井川皐月の先輩との絶妙な距離感がいいし、凄みも輪をかけてすごい。まさに縮み上がる座長を演じた戸谷昌弘、空気読めないキャラクタな座員を演じた石塚義髙のうざったさもいい。山口雅義の温い感じもいいけれど、出番少なめで残念。女優があと二人クレジットされているけれど、一人しか出てないのはなぜなんだろー。姉妹かな、日替わりかな。
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