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2014.12.04

【芝居】「気がつけば、あした。」aibook

2014.11.30 14:00 [CoRich]

2日までOFF OFFシアター。90分。

父親の三回忌に境内の集会所に集まった家族。火山はいつものように噴火していている。兄は結婚できないまま母と同居していて、結婚して東京で暮らす妹の夫は、母親を東京に呼ぼうと云っている。母親のMRI検査の詳細の結果はまだだが、記憶はまだらになってきている。東京に出て行ったこの寺の娘が数十年ぶりに戻ってきているが、両親には会っていないという。

年齢を重ねた私たち、年老いていく親の存在。結婚できないアタシ、子供ができること。あるいは人を失ったことにどう向き合えるのかということ。物語の外側には天災の足音が聞こえるような舞台の設定で、今の私たちのさまざまな気持ちにフックするように緻密に汲み上げられています。アタシには兄だったり、あるいはもはや母親に近い年齢だったり。観客がそれぞれ持つ背景によって、感じ方がさまざまに変化するのだろうなと思います。

気がつけばあしたになっている、というタイトルは母親の台詞として現れ、記憶がまだらになっていく、というのもまた私たちの未来の姿。こういう小さなことが積み重なるのは日常だけれど、それはいつか手に負えない事態になるかもしれないというのは、物語の外側にある火山の噴火の相似形。この物語の中で、寺の娘の存在はちょっと他の登場人物からは独立していて物語としてリンクしていないというのはアタシの友人の言ですが、それでもこういう人物が物語に必要だと作家が感じたのはなぜだろうと思ったりもするのです。それは母親、母親になる女との対比で、一人の女というもう一つの作家の立ち位置を作りたかったんじゃないか、というのは考え過ぎか。

なにより隙のないキャスト陣。母親を演じた岡まゆみはアタシにとってはかの番組のお姉さんだけれど、老眼鏡が似合う歳になっても可愛らしい。兄を演じた瓜生和成はちゃんとお兄ちゃんであってもいろいろがままならない造型がしっかり。妹を演じたもたい陽子は可愛らしい女優だと思ってたけれど、しっかりと年齢を重ねていい味わい、それなのに抜群のボディにちょっと目を奪われてしまうオヤジはかなしい。夫を演じた郷志郎は医者という役ゆえ、物語の要所要所を押さえ、物語を進める原動力にもなる重要な役。落ち着いた雰囲気がしっかり。寺の娘を演じた菊池美里は稀代のコメディエンヌなのにそれを封印、内向する造型は新たな魅力。

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