【芝居】「爆弾魔メグる」あたらしい数字
2014.11.8 19:00 [CoRich]
10日まで王子小劇場。95分。初見の劇団です。
高校生の時に女の目の前に現れたピエロは心の中にある風船が膨みつづける人生だと云う。好きだった男の子は別の女の子が好きだと相談してくるし、憧れているアイドルだって必ずしも勝てない。 友達はその兄が心療内科に通い仕事を辞めてしまったことを馬鹿にするが自分だってそうかもしれないと思う。女子大生になって舐められないように化粧をするが、まわりの女たちの合コン、男、金にまつわるうるさい会話が耳に入ってくるし、遊園地で彼氏となった同級生と乗ったゴンドラの盛り上がりも、他のゴンドラで同じことが起きていると考えると幸せな気分も独占できなくて嫌だ。アルバイトから帰宅した女を迎える彼氏は結婚するかしないかも全く考えていない、というし。
女の、というか人の心の中に芽生えるひっかかかる気持ち、それはどんどん大きくなる。友達との会話で感じる違和感を吐き出せないことだったり、好きだった男の子に告白されない気持ちだったり、憧れたアイドルが総選挙に破れAVに出演するような負け方(じつはここの記憶が曖昧で、彼女が好きだったアイドルは劇中に登場する三人のアイドルの誰だったかがわからないのですが、こう考えるとすっきりするのでこう書いてみます)だったり、心療内科の患者にもなれない自分だし、彼氏との幸せが独占できないことだったり。一人の女性を中心に置いてさまざまに点描していきます。物語として大きなうねりを生むよりは、黒い風船をシンボルに使いながらスケッチとして会話を描く、という体裁。舞台上方に場面のタイトルやつぶやきのようなものが映されたりするけれど、アタシの席では舞台を見てるとついつい見逃しがちで、ちょっと位置が高すぎるような気はします。
が、それぞれの点描で描かれる小さな会話での台詞のキレ具合がすごくて、ずっと見ていられるたのしさがあります。とりわけ、女子大生の女子大生二人が先日の合コンの戦果報告する下世話で大騒ぎな会話の直後に二人で写メを撮るポーズで無口になり、その二人がスマホをいじってずっと黙ってる、という会話の落差のリアリティ。あるいは、バイト先の飲食店ででOLの先輩後輩が忙しすぎる会社の愚痴をこぼしていたり、なんてシーンもいい。 また、同級生の男に呼び出されて告白する流れだろこれというのに、男は別の女の子が好きで相談しやすいから相談してくるなんていう流れでの、「がっかり」という音が聞こえてくるような空気感も濃密です。 ほとんどのシーンは音楽を使わず、静かな会話でこの濃密さをずっと維持すると言う精度もたいしたもの。
女優たちを見ているだけで脳みそが喜んでしまうのはアタシがオヤジだからですが、細やかな物語をたしかに演じるちからも併せ持ちます。 黒い気持ちを抱える女を演じた木村みちる、序盤のスッピン風女子高生から、化粧を経て女子大生に至るシーンの静かな変化に大人の女性への変化をこの短い時間で見せていて奥行きがあります。ちょっと面倒くさい風だけれど、その僅かな気持ちの振れ幅を繊細に描くちから。 男子に告白される同級生、あるいは総選挙投票で一位になるアイドルや先輩OL、心療内科の職員を演じた田中渚はシュッとした美人なのにあかるく人なつっこい雰囲気が「告白される」「一位になる」ことへの説得力。 二位となったアイドル、兄を馬鹿にする同級生、アルバイト先の先輩を演じた服部容子は美しく、すこし近寄りがたいような距離感の造型が魅力。 選ばれなかったアイドルや後輩OLを演じた西山愛は柔らかな雰囲気を纏ってまた別の魅力。
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