【芝居】「 新・一家団欒」アートひかり
2014.10.24 19:30 [CoRich]
静岡生まれの小説家藤枝静男の同名の小説を原作に35分。26日までMウィング。シアターTRIBEと交互上演。まつもと演劇祭のオープニングを飾る一本。
男がバスに乗って帰ってきた「実家」では父や兄、姉たちが待っていてくれた。今日は祭りなので連れだって出かけていく。
死んだ男が先に死んでいる父や兄姉たちに出会って過ごす時間。一家団欒という時間の過ごし方。いままでの一家団欒とはまったく違って、これがずっと続いていくのだろうという雰囲気。
物語としてはそう多くの要素を詰め込んでいるわけではありません。死んだ男が戻ってくるまでを映写した映像(カタカタという映写機の音がいい)のあとに、一番下の弟であること、兄や父たちに何か悪いことをして後悔してるということというわずかな情報を加えて、あとは祭りと団欒という風景。男はほぼ背中を向けて演じていて、まだ生きている私たちがこれから経験するかもしれない情景、という視点。祭りの風景はおそらくそこでやっている祭り、生きている頃と同じように歩いて回ることはかつての風景でもあるし、寺か神社の境内の祭りをそぞろ歩くと、死者たちが寄り添っているかもしれないなぁと思ったり。最初は閉じていた扉をニナガワよろしく後半で開いて奥行きを広げるのは楽しい。
引っ越して町を離れてしまったのでその全貌を体感できたわけではないのですが、今作の作演はこの演劇祭の前から、さらには期間中もワークショップや劇場間で観客を誘導するチンドンパレードなどイベントの厚みを持たせた立役者でもあったと思うのです。
正直に言えば、エンゲキ、を期待して来た観客すべてを嬉しがらせるような舞台ではありません。そういう意味では攻めすぎという気がしないでもないのです。それでも、きっちりと身体の動きの美しさは踊りのようでもあって、なるほど、私たちが歩いている祭りの風景の中には、それに寄り添うように、あるいはそれとは関係なく彼らは彼らで縁日を歩く死者たちの姿があったりするのかもしれないな、と思ったりもするのです。
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